芸能・文化

『日本の貧困女子 衰退途上にあるこの国のリアル』 衝撃的な沖縄 あぶり出す

『日本の貧困女子 衰退途上にあるこの国のリアル』中村淳彦著 SB新書・957円

 今から2カ月程前。私は中村淳彦氏の取材に同行した。「日本の貧困女子」には、北関東と沖縄の貧困問題が収録されている。北関東の貧困問題とは違い、沖縄県は最貧困県にも関わらず、街が賑(にぎわ)っていることに中村は衝撃を受けていた。統計上では貧困県でも、そうは見えなかったそうだ。

 沖縄は貧困率、離婚率が高く、最低賃金も安い。本書では虐待がやめられないキャバクラ嬢シングルマザー、違法性風俗店のオーナー、闇金業者、闇金の借金返済に追われているシングルマザー風俗嬢、がんの風俗嬢の話が収録されている。

 中村は本書の冒頭で執筆理由に触れ「第1次情報を提供することが役割だ」と述べている。第1次情報が重要なのは、何事もないように振る舞っているが、普段生活している周辺にも貧困で苦しんでいる人がいるということを知ることだ。どのような“苦しんでいる人”がいるのかあぶり出せるのである。実際、闇金業者に本書を手渡したときのこと。あまりのリアルさに自嘲と苦笑いが入り交じった表情を浮かべた。現状に詳しい当事者が現実を認めるほどの取材をしているということが非常に意義があるのではないか。

 とはいえ、中村はこれまでの執筆作について「貧困ポルノ」だと批判されることが多々あった。貧困層を見せ物のように扱っている印象を受けていたのは確かだ。しかし、本書は「貧困ポルノ」から脱却している。“今、苦しんでいる人”の話に、徹底的に耳を傾け、客観視している。読み手へ「本当に現状のままでいいのか?」と問い掛けているように読める。同情を誘うわけでもなく、読み手にありのままを伝えている。

 本書に収録されている沖縄の貧困層の話は、衝撃的なものばかりだ。このような人はいないと現実逃避をしたくなったり、かわいそうな人たちと思ったりするかもしれない。本書に書かれている現実を受け入れられない人もいるだろう。しかし、これは現実なのだ。

 この現実を私たちは、どう受け止めればいいのだろうか。読者とともに考えてみたいと思った。

(上原由佳子・フリーライター)

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 なかむら・あつひこ ノンフィクションライター。高齢者デイサービスセンターを運営していたが手を引き、現在はルポルタージュを執筆。代表作に劇場映画化もされた「名前のない女たち」シリーズ、「東京貧困女子」「崩壊する介護現場」など。

 

日本の貧困女子 (SB新書)
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