「正直者がばかを見る」社会に疑問 投資運用の最善線にいた新井和宏さん 自分ごとにすることが社会課題解決に あす新報でSDGsファーラム


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 世界中で実現に向けた取り組みが進む「持続可能な開発目標(SDGs)」をテーマに、県民が出会い、できることを考えるSDGsフォーラム「世界を変える一歩 沖縄から」(琉球新報社主催)が17日午後2時から、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開かれる。金融・経済の視点で基調講演する新井和宏さん(eumo社長)は、ファンドマネジャーとして世界の資産運用の最前線を走り続けた末、資本を持つ者が市場を牛耳り、生産者にしわ寄せが来る「正直者がばかを見る」社会に疑義を呈す。新しい経済圏の社会実験にも着手している新井さんに、社会課題の解決と企業の在り方を聞いた。

SDGsの今後に向けて、展望を語る新井和宏さん=15日、那覇市泉崎の琉球新報社

 ―「持続可能な資本主義」とは。

 「米誌タイムが『今年の人』に地球温暖化防止を訴えるグレタ・トゥンベリさんを選んだ。環境問題は時代の象徴であり、資産運用の世界でも注目された。環境(E)、社会(S)、ガバナンス(企業統治=G)を重視し持続可能な社会に役立つ企業への『ESG投資』はさらに拡大する。日本は遅れているが、オリンピックを開く2020年はその取り組みが世界から問われる」

 ―どのような会社が必要とされるか。

 「社会に必要とされ、環境に配慮して、すべての利害関係者が一緒になって支え育てようと思える会社だ。環境や社会という従来の数字には表れなかった価値を大切にする経営と、その価値を『見える化』していく作業の両方が必要だ」

 ―沖縄で、具体的にどのように取り組めるか。

 「例えば、沖縄に多いひとり親の問題は、沖縄だけの課題ではなく、解決策は世界で応用できる。目の前の課題解決の延長線上に世界がある。あらゆる企業の本業は社会とつながっており、本業を通して課題解決することを見直すといい。『一部の人の課題』に見えるものが、世界では多くの人が求めている」

 ―ポイントは。

 「(米マイクロソフト創業者の)ビル・ゲイツはものすごいお金を持っているが、世界の課題を解決できていない。解決はみんなが手をつなぐことでのみ実現する。遠くの課題は“自分ごと”にならない。目の前の家族、同僚や地域を幸せにしようという“自分ごと”が世界に広がり『誰一人取り残さない』を実現できる」

(聞き手・黒田華)