【記者解説】埋め立て10年、沖縄県の試算裏付け 軟弱地盤が要因、建設長期化が現実味に


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 名護市辺野古の新基地建設で、政府の埋め立ての工程に10年程度かかることが明らかになった。軟弱地盤の改良に時間がかかることが理由だが、県は昨年の時点で工事が13年以上かかると指摘し、問題視してきた。政府はこれまで工期を明確に示していないが、県の主張が裏付けられる形で基地建設の長期化が現実味を帯びている。

 2013年に日米両政府が合意した現行の基地返還計画では、辺野古移設に埋め立て5年、施設整備3年などを見込み、米軍普天間飛行場の返還は「2022年度またはその後」と掲げられた。しかし工事は大幅に遅れ、昨年12月に浅瀬部分から埋め立て土砂の投入が始まったが、現在も大浦湾側の軟弱地盤のある一帯は手つかずのままだ。

 移設への県内の反発は根強い。玉城デニー知事は政府が軟弱地盤の工事に入るために必要な設計変更を承認しない公算が大きく、返還時期はさらに遅れる可能性もある。政府が今後、工事が進まない要因を県の反対姿勢に“転嫁”する場面も多くなりそうだ。政府高官は工期について「政治次第でどうにでもなる」と県をけん制する。

 辺野古移設を急ぐ理由として、政府は市街地に囲まれる普天間飛行場の早期の危険性除去を掲げてきた。しかし工事の長期化が避けられない以上、その大義名分は大きく揺らいでいる。
 (當山幸都)