守るために、破壊へ 映画「アイリッシュマン」 28日から桜坂劇場


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 男たちは、大切なモノを命がけで守る。しかしそれは必ず破滅へと向かう。まるで破滅が目的かのよう。女、友情、絆、家族、金、地位、プライド。結局、大切な人、守ろうとしたモノさえ傷つけ、破滅していく。私は、そういう男が憎い。しかし、いとおしい。「アイリッシュマン」は、まさに破滅していく男たちの物語。

 1975年、アメリカで大統領の次に権力を持つと言われた男、ジミー・フォッファが失踪し、未解決のまま死亡認定された。死体さえ見つからない、謎だらけの事件。数十年後「俺が犯人だ」と名乗る一人のアイルランド系アメリカ人(アイリッシュマン)が現れる。

 イタリア系マフィアに雇われ、彼らの指示で動き、手を汚し続けたアイリッシュマン。彼は自分の家族を守りたいだけだった。彼の証言に基づいて綴(つづ)られた物語は、事件の真相にとどまらず、当時のアメリカの闇を描く。

 とはいえ、本作最大の魅力は役者陣。破滅していく男たちを、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノが、なんともいえない哀愁で描く。いとおしくて仕方ない。

(桜坂劇場・下地久美子)