【記者解説】国の突然の方針転換、沖縄県内土砂を使用するわけとは


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 名護市辺野古の新基地建設で、防衛省が事業計画を見直し、埋め立てに必要な資材全てを県内でまかなう見通しを示した。外来種の混入などに関する県の「土砂条例」の規制により工事が長期化するのを避ける狙いがあるとみられるが、これまでの説明が一変しており唐突感は否めない。

 辺野古の埋め立てに必要な土砂は2062万立方メートルで、東京ドーム約17杯分に相当する。うち約8割の1644万立方メートルは岩を砕いた「岩ズリ」で、同省は西日本各地で購入して調達する計画だった。

 防衛省の資料によると、埋め立てに必要な石材、海砂、岩ズリの量はそれぞれ年間約54万立方メートル、約126万立方メートル、約445万立方メートル。同省の調査の結果、県内の調達可能量はそれぞれ年間約240万立方メートル、564万立方メートル、約491万立方メートルで、工事に必要な量を県内で全て確保できる見通しが得られたという。

 今回の方針転換により、防衛省は県内で調達可能な岩ズリの9割を今後独占して使うことになる。加えて、軟弱地盤の改良でくいを打つために使う海砂(350万立方メートル)についても県内で調達する考えだ。

 一方、県内での資材調達を巡っては、割高な契約単価や、防衛省側の設定単価と業者の受注単価の一致など不透明な実態も指摘されてきた。ばく大な量の調達が環境にもたらす負荷も懸念され、膨らみ続ける工期や総事業費と同様、計画への疑問は尽きない。

 方針転換に伴い、防衛省は今後設計変更の申請を余儀なくされるが、県はこれまで自然環境に過度な負荷がかからないかなどを厳正に審査するとしており、新基地建設に反対する立場からも承認する可能性は低い。今回の変更で完成への道筋はさらに遠のきそうだ。
 (當山幸都)