『甦れ!首里城』 不滅の城に寄せる魂


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『甦れ!首里城』琉球新報社・1100円

 写真集「甦れ!首里城」は見事に首里城の神髄を表現している。なだらかに曲線を描く絶妙な造りの石段や城壁は人々を天上にいざなうかのように伸び、低さを高く、狭さを広く見せている。上空から見た首里城はどこの国の城にも劣らず、風格がある。小国だが、大国だという誇りがみなぎっている。首里城を中心に据えた貿易立国は当時、国家体制の理想ではなかっただろうか。

 首里城は政治、経済、文化、学問などを造り出しただけではなく、今、琉球舞踊の奉納、新春や中秋の宴、冊封儀式、古式行列などを、ミス・インタ―ナショナル世界大会さえも呼び寄せている。

 世の栄枯盛衰を見守り続けてきた首里城を巨大な炎と煙が襲っている。この姿を見つめる人々の表情を何と表現したらいいのだろうか。号泣でもなく、驚愕(きょうがく)でもなく、叫びでもなく、もちろん笑顔でもなく、畏敬の念と決意を秘めた表情に思える。この写真集は一面、不滅の首里城に魂を寄せる人々の写真集ともいえる。十月三十一日のドキュメントは不眠不休の記者たちの「闘い」が描かれているが、この「闘い」は県民にもあまねく行き渡っている。

 崇高な歴史の基盤に屹立(きつりつ)している姿は、建物が焼け落ちたといえどもどこか精神の塔のように品格を保っている。建物だけが宝物(ほうもつ)ではなく、「母なる首里城」は琉球の人々の有形無形の宝物を生み出した。

 首里城を再建する途上に沖縄の新たな文化や芸術が芽を出し、花開く予感がする。炎上したとはいえ、五百年前にいったん誕生した首里城はあまたの人に与える、計り知れない威厳と美ゆえに永遠に存続する。何日も茫然(ぼうぜん)自失(じしつ)としていたが、この写真集を見続けているうちに力がみなぎってきた。

 (又吉栄喜・小説家)

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 首里城の歴史、復元から焼失までを写真と記事で振り返った写真集。歴史をたどった「琉球統合の象徴『首里城』」や記者たちの行動を記録したドキュメントなどを収めた。火災当日の号外と別刷り特集(11月30日)を付録としている。