教員が多忙化した大きな原因は教職員定数の改善が行われてこなかったことにある。40人学級という基準は、小学1年で35人に緩和されたものの、1980年から基本的には変わっていない。教員1人で担当する児童・生徒の人数の多さは、先進諸国と比べて日本は突出している。
もともと教員の数が少ない上、文部科学省は学力テストの導入や道徳、英語の教科化など、各種施策を上乗せしていった。その間も定数の増加は図られなかった。現場の教員は数が増えないまま、成果を出すことだけが求められていった。条件を整備するのが教育行政の責務なのにもかかわらず、どれだけの教員がいれば施策が実行できるのかを計算するという発想が文科省にはなかった。
多忙化に対する文科省の対策も方向性が間違っている。変形労働時間制は繁忙期の勤務時間を長くし、夏休みにまとめて休みを取れるようにするものだが、学校の長期休みには官製の各種研修があり、まとめて休みを取れるという保障はない。小手先の改革ではなく、抜本的な改革が必要だ。子どもの数が減少している今だからこそ、定数を見直すべきだ。
(教育行政学)