首里城再建 沖縄県の考え方は?20億円の寄付金はどう使う? 国と県の動きまとめ


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 首里城が焼失して2カ月となるのを前に、玉城デニー知事は26日の記者会見で、正殿の早期復元と段階的公開、琉球文化の復活・国内外への発信など七つの柱を基本にした首里城復興に向けた県の基本的な考え方を発表した。首里城再建に向け、これまで県や那覇市、県内報道機関に託された寄付金は20億円を超えているが、城郭内は国営公園となっており、正殿などの建造物の再建費用は国が負担する見通しだ。そうした中、県は基本的な考え方の中で「琉球文化の復興」などソフト面も強調することで、寄付の使途についても幅を持たせた格好だ。

首里城復興について県の基本的な考え方などを述べる玉城デニー知事=26日午後、県庁

 焼失した正殿など首里城の建造物は当時の費用で約73億円。だが資材高騰などで今回の再建では建造費が膨らむとの見方が強く、再建の総事業費は現段階で分かっていない。首里城を管理運営する沖縄美ら島財団が契約している損害保険会社は、建物や収蔵品を含む首里城有料区域全施設の損害保険評価額を100億3500万円と査定。保険金の支払限度額は70億円で、今後の調査などを経て支払総額が決定する。

 国がいち早く首里城再建に乗り出したことで、焼失前と同様、“沖縄のシンボル”が国の所有物となる見通しだが、県民からは「保険金と寄付額もある。県が負担することで県に所有権を移すべきではないか」との声が根強く残る。

まぶいぐみ

 富川盛武副知事は琉球新報社などが主催した首里城再建フォーラムで登壇し「沖縄には人間礼賛のちむぐくるの文化がある。自然に畏敬の念を払い、先祖を敬う。恵まれない人に手を差し伸べる伝統文化だ」と再建の理念を語った。首里城再建の意義については「沖縄文化のルネサンス(復活)」を掲げ、国連が定め、県も取り組むSDGsの理念とも一致すると強調。「首里城にまぶいぐみを(魂を入れよう)」と呼び掛けた。

 こうした県の理念が反映された基本的な考え方が(1)首里城の早期復元と段階的公開(2)火災の原因究明および防火・管理体制の強化(3)文化財などの復元および収集(4)伝統技術の活用と継承(5)琉球文化のルネサンス(6)世界遺産としての首里城を中心とした歴史的環境の創出(7)歴史の継承と試算としての活用―という七つの柱だ。

前のめりの政府

 ただ、政府の動きは県の先を行く。県の発表に先立ち、政府は12月11日に菅義偉官房長官をトップとする首里城復元のための関係閣僚会議を首相官邸で開き、前回復元時の考え方を踏襲するとともに、防火対策を強化することなどを柱とした基本方針を決めた。

 「どっちが先、どっちが後とかそういうことではなく、それぞれが取り組むべき事に対して着実に進めていく」(玉城知事)とする県だが、「沖縄に寄り添う」(菅官房長官)姿勢を前面に打ち出す好機と捉え、前のめりになる政府に対し焦燥感を感じているのが実情だ。

 県は1月に観光や琉球の歴史や文学などの専門家でつくる有識者会議を県独自に設置し、会議の提言を踏まえて本年度内に首里城を中心としたまちづくりや産業振興の在り方などを盛り込んだ県の「基本的な方針」を策定する方針だ。有識者会議とは別に県民の思いを反映させるための「県民会議」設置に向けた作業も進めていくとしているが、所有権移転の課題も含め、首里城の再建の在り方について全県民的議論を図っていくことが求められそうだ。