県内で豚コレラ(CSF)の発生が確認された翌日の9日昼、宜野湾市内の小学校で、児童に「なるべく給食を残さないように」との呼び掛けがあった。同市の給食センターによると、市内3カ所のセンターが、1件目の豚コレラが発生した養豚業者に食品残さ(残飯)の処理を委託していた。豚が殺処分になったため、残飯の処理を受け入れられなくなったことが「完食」呼び掛けの原因だった。
給食センターによると、9日中に代わりの委託業者が見つかり、残飯が処理できない事態は解消した。同センターでは給食の残飯の処理のみを養豚業者に委託し、調理で余った生の豚肉などは別の方法で処理しているという。
国は家畜伝染病予防法に基づき、衛生管理で最低限守るべき基準として「飼養衛生管理基準」を定めている。食品残さを原材料として「生肉」を含む飼料を家畜に与える場合、「事前に摂氏70度以上で30分以上、80度以上で3分以上の加熱処理が行われたものを用いること」としている。
今回の豚コレラウイルスの侵入経路を巡り、農家が食品残さを用いた飼料を加熱処理していなかったことを指摘する見方もある。ただ、農林水産省によると、給食センターからの残飯には「生肉」の混入は考えにくく、給食の残さだけを飼料に使っていたならば直ちに基準違反とは言いがたいとする。
9日午後、那覇市の沖縄畜産振興支援センターで開かれた「CSF発生に伴う防疫対策説明会」で、養豚業者や飼料関係者ら数十人が集められ、豚コレラの発生状況や今後の対応策について国や県の担当者から説明を受けた。質疑応答に入ると、1件目の発生となった農家が食品残さを加熱せず飼料としていたことについて、県の指導の徹底に追及が及んだ。
「飼料に食品残さを利用する際の指導はどこまでできたのか」との質問に対し、県畜産課の仲村敏課長は「一生懸命指導しているが、不足を感じている。基準を順守してもらえる指導力を身に付け、対応を強化したい」と硬い表情で釈明した。
終了後、取材に応じた養豚業者の男性(66)は「食品残さを利用した飼料を加熱しないことが一番の問題だと思う」と強調。飼養衛生管理基準について「県の指導が弱すぎるという面もある。県で条例化してでも強い指導ができるようにする必要がある」と指摘し、末端の農家まで衛生管理を順守させるよう注文した。
一方、別の養豚業者の男性(59)は感染経路が不確定の中、加熱の有無のみがやり玉に挙がることを懸念する。沖縄では歴史的に豚の飼育に残飯が用いられてきた側面もあるとし、「感染の不安を考えると加熱した方がいいはずだが、近年は小規模農家も多く、そこまで手間を掛けられない業者もいるのが実情ではないか」と語る。
(外間愛也)