市街地で豚の埋却地確保が困難に 目を付けたのは市域面積の3割占める米軍基地〈感染豚コレラ 県内畜産業への波紋〉⑤


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埋却予定地とみられる嘉手納弾薬庫内の土地=13日、沖縄市白川

 10日に沖縄市内で豚コレラ(CSF)の発生が確認されたことを受け、殺処分した豚の死骸を埋める土地を確保するため沖縄市の担当者が奔走している。大半を商業地や住宅地が占める市街化した市内で、何千頭もの家畜の死骸を埋めるのに適した広さを確保することは困難を極めた。浮上したのは市域面積の34%を占める米軍基地だった。

 8日、隣接するうるま市で豚コレラの発生が確認されたという一報を聞き、沖縄市の川満永公農林水産課長は「沖縄市にも飛び火するのでは」と嫌な予感におそわれた。市内での感染確認を待たず、埋却地の候補地選定に動き出した。

 予感は的中し、県から約3千平方メートルの土地を用意しておくよう内々に打診が来た。全庁を挙げて候補地探しに駆け回った。

 沖縄市内の養豚場で感染が確認された10日、市農林水産課は前日までに選定した市有地や民間地、市外の土地も含めた複数の候補地を机上に並べた。関係部局で費用面や風評被害などを議論し、使用可能な土地を絞り込んだ。

 「これだけの規模の埋設で市民に影響がない場所を考えると、どうしても基地も候補に挙がる」(関係者)。米軍嘉手納弾薬庫知花地区内にある425万平方メートルの市有地の一部が候補地として浮上した。

 嘉手納基地を拠点とする第18航空団や沖縄防衛局に職員が直接出向き、米軍基地や国有地などの提供を求めた。だが、両者は「判断できない」との回答だった。埋却地が見つからず、発生農場では殺処分を始められない事態にもなる中で、桑江朝千夫市長は10日夕に第18航空団に要請し、関係機関を通じて水面下で交渉が行われた。

 12日午後、桑江市長と米空軍第18航空団がほぼ同時にプレスリリースを発表。米軍が市の要請に応じ、弾薬庫知花地区の北側に位置する市有地の使用を承諾したことを明らかにした。

 ところが、公表から数時間後に現場を視察した関係者からは作業を困難視する声が上がった。ある関係者は、道幅が狭く舗装されていないことから、重機搬入時などに2次災害が生じることを懸念した。

 重機を入れるのが難しいといった調査関係者らの指摘を踏まえ、県や市の関係者らは13日に再度現場の視察を実施し、トラックを乗り入れるなどして「問題ないことを確認した」(市幹部)と強調した。

 市による埋却地探しが行きつ戻りつする間の11日に、市内で2件目の感染が確認された。その養豚場の敷地内に広めの空き地があったことから、くしくも1件目の養豚場の殺処分も含めて、死骸を全て埋却できるとの見通しが出ていた。

 関係者は「今埋却している場所で間に合うように祈っている」と願うが、感染が拡大すれば再び埋却地問題が浮上する事態も想定される。川満課長は「机上での議論を詰める作業は今後も継続しなければならない」と語った。

(下地美夏子)