〈35〉慢性多量飲酒 悪影響、肝臓以外にも


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 酒、お酒、う~ん、楽しい雰囲気がある。今回は皆には悪いが、酒が身体に与える影響の話をします。

 酒というと肝臓のことを考える人が多くいます。しかし酒は肝臓だけでなく、その代謝経路を介して多くの臓器に影響を与えます。脳、心臓、肺、腸、骨髄、ホルモン、膵臓(すいぞう)、肝臓、腎臓と、きりがありません。

 頭からいくと、ビタミンB1が欠乏しウェルニッケ脳症をきたします。ビタミンB1の欠乏は心臓にも影響を及ぼし、脚気(かっけ)心という拡張型心筋症を起こします。

 アルコールの直接な障害として、さまざまな不整脈を起こすこともあります。ペースメーカーが必要となる完全房室ブロック、心房細動もあり、心不全の原因ともなります。肺は、アルコール性末梢(まっしょう)神経障害やアルコール性筋症のために胃内容物が逆流し、誤飲性肺炎を起こしやすくなります。

 常時(毎日)飲酒しているあなたはよくわかると思いますが、排便は通常下痢に近いのではないですか? 慢性飲酒は葉酸の欠乏をきたします。そのために腸の絨毛(じゅうもう)の細胞分裂が阻害されて腸の吸収面積が減り、吸収障害により下痢気味になるのです。葉酸の欠乏は貧血の原因にもなります。

 膵炎の原因も2番目は酒です。酒が肝臓に悪いのは、皆さんなんとなく分かっていると思います。酒を飲んでいると中性脂肪が高くなります。そのため脂肪肝になりやすく、同時にアルコールそのもの、その代謝物が肝臓に多くの悪影響を与えます。それでも早い時点で飲酒をやめると、完全には回復しないまでも、改善はします。

 腎臓に対する作用は、腎臓そのものを悪くすることよりも、腎を介しての作用が問題です。カリウムをはじめ多くの微量元素を体外に出してしまいます。逆に慢性的に酒を飲んでいると体液量が増し、血圧が10%程度上ります。急性期のアルコール中毒は別です。

 このように多くの問題がある慢性アルコール多量摂取をあなたは続けますか、それともこれから制酒に努めますか?

(西平守樹、西平病院、内科)