北部 神経とがらせ 侵入阻止へ徹底防疫〈感染豚コレラ・県内畜産業への波紋〉⑧


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国頭村が設置した消毒ポイントで大型車両に消毒剤を散布する作業員=10日、JAおきなわ国頭支店集出荷場(国頭村役場提供)

 県内で豚やイノシシの感染症、豚熱(CSF、豚コレラ)が発生している件で、本島北部地域でも養豚農家や行政が対応に追われている。感染は沖縄市、うるま市など中部地域で広がっているが、北部の農家や行政関係者らは防疫に神経をとがらせている。

 県による畜産関係車両の消毒ポイントは、北部では金武町の屋嘉地区共同作業所と名護市下水処理場の2カ所で設置されている。名護市の消毒ポイントは日に60~80台程度が利用し、防護服を着た職員が1台ずつ丁寧にタイヤ回りなどを消毒する。

 運送業者など養豚とは直接関係しない業者にも消毒の動きは広まっているようだ。名護市で消毒を受けた宜野座村の運転手は「養豚場への出入りはない車両だが、会社からの指示で消毒を受けている」と話す。

 市町村独自の対策も始まっている。うるま市での豚熱確認から一夜明けた8日、国頭村は公道に石灰散布を始めた。村内農家からの依頼を受けたもので、独自に消毒ポイントも設置した。村の独自の予算で、豚熱終息まで対策は続ける。村担当者は「農家は不安でたまらないと思う。(防疫など)村も必要なことをやっていきたい」と述べた。

 各農家も豚舎の管理や消毒に注意を払っているが、懸念は尽きない。東村高江の養豚場で豚千頭を肥育している西銘晃さん(66)は「家畜検査で陰性となっても、一転して陽性になった事例もある」と気をもむ毎日を送る。

 西銘さんは養豚場のほかに牧草地も所有し、収穫した牧草をヤギや牛の飼料としてほかの農家に提供している。これまでは敷地内の牧草集積地で飼料の引き渡しをしていたが、豚熱の発生を受け敷地外の県道上で受け渡しをするようになった。「取引先に頼み、とにかく感染しないよう警戒している。終息するまで心が休まらない」と声を落とす。

 北部地区で約2500頭を飼育する男性は県内での豚熱発生を同業者の仲間から聞いた。「『まさか』の一言だ」と衝撃を振り返る。

 豚熱の発生後、男性の豚舎でも消毒の強化や出入りの制限など水際対策に心を砕いている。「えさや薬品関係の業者はどうしても出入りが必要だ。気をつけて消毒は続けているが、どこでどう感染するか分からない」。万全を期しても、不安は拭えずにいる。

 「どこからどうきたのかを一番知りたい。分からないままだと対策にも不安が残る」。感染経路など原因究明を求める。「県には120パーセントの防疫体制をつくってほしい。自分たち農家も一生懸命にやる。これ以上広まらないでほしい」と願ってやまない。

(吉田早希、佐野真慈、塚崎昇平)