<社説>日米安保改定60年 沖縄のトゲ抜く責務ある


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 現行の日米安全保障条約が署名されて60年を迎えた。米国が日本を守り、日本は基地を提供して米軍の活動を支える協力関係が定められた。しかし、提供された在日米軍専用施設面積の7割は沖縄に集中する。米軍による事件事故、騒音や土壌汚染といった環境破壊などの過重な負担は「安保のトゲ」として県民に突き刺さり続けている。

 日米安保を維持したいならば、「沖縄の負担軽減」は国の責務であるはずだ。しかし政府は日米同盟を優先し、沖縄県民の反対を押し切って米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古への新たな基地建設を進める。明らかに矛盾している。
 政府は沖縄の過重な負担を軽減することを米国と真剣に交渉すべきだ。さらに事件事故や環境問題などが起きても日本の捜査や司法手続きが制約され、米側の運用が優先される日米地位協定を改定するよう強く求める。
 日米安保の旧条約は敗戦後、日本が「独立」し、沖縄などが切り離されて米施政権下に置かれた1952年に発効した。日本は米国の同盟国となり、米軍の駐留を認めた。60年に改定された現条約は第5条で米国に日本防衛の義務を課し、第6条で日本に米軍への基地提供を義務付けた。その後の日本は「軽武装・経済重視」の政策を取り、高度経済成長に向かう。
 しかし沖縄は日米安保条約が結ばれた際は米施政権下にあり、国会に代表も送れず、条約の批准に何の発言権もなかった。高度成長の恩恵もなかった。
 県外で激しくなった反米軍基地運動を受けて50年代に山梨や岐阜から沖縄に海兵隊の第3海兵師団が移り、69年には海兵航空群が山口県の岩国基地から普天間に移った。本土の負担軽減の策として、米施政権下で核兵器も配備でき、米国人の優先的扱いが可能な沖縄に基地が移転されたのである。
 日本復帰して現在に至るまで、沖縄の負担は変わっていない。東西冷戦の終結に伴い、主に旧ソ連に対抗する軍事同盟だった日米安保は、アジア太平洋地域の安定装置として再定義され、現在は中国への対処を強めている。
 日米を取り巻く安全保障環境は変化しているのに、日米安保のひずみを引き受けるのは沖縄だけという状況が許されるのか。
 この状況は日本国民の、日米安保の恩恵は享受したいが米軍施設は嫌だという「Not In My Back Yard」(うちの裏庭にはご免)の論理に基づいている。無意識の「構造的差別」を日本国民が自覚しない限り、沖縄のトゲは抜けない。
 故翁長雄志知事は「沖縄が日本に甘えているのか、日本が沖縄に甘えているのか」と問うた。政府は新たな負担となる辺野古新基地建設をやめ、米国と沖縄の負担軽減について話し合うべきだ。