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『増補改訂版 無意識の植民地主義―日本人の米軍基地と沖縄人』 外されることがない眼差し

『増補改訂版 無意識の植民地主義―日本人の米軍基地と沖縄人』 野村浩也著 松籟社・2860円

 昨年暮れ、米軍基地のない大阪で「沖縄問題」をテーマに講演した。参加者250人のうち119人がアンケートに答え、大部分が「大阪で沖縄の苦しみをどう考えたらいいか、真剣に探してみる」と追記していた。

 講話の途中、著者の対日本(人)観が頭をよぎった。私が講演で繰り返したのは、有権者の8割近くが支持する日米安保条約には、沖縄への基地集中は明記していない。にもかかわらず、沖縄と本土の米軍基地の負担割合は、面積を1人当たりで言い換えると、200倍以上を沖縄側に強いている。辺野古新基地建設について拒否の姿勢を示した県民投票の結果に「沖縄と日本本土の民主主義は違う」と言い放った前防衛相など、あきれて開いた口がふさがらない―ということだった。

 著者は、沖縄について知ったかぶりや知らんふりをして現実を直視しない日本人の意識構造を「植民地主義」と呼ぶ。すでに大田昌秀さん(2017年死去)は「醜い日本人」と喝破した(1969年)。05年に初版を出した著者はこれをさらに一歩踏み込んだ。沖縄は日本本土の「植民地」で、これを改めるには、植民者(日本人)がそれに気づかなければならない。

 その15年後の今、増補改訂版として著者は再び世に問うている。「沖縄大好き」という相手に「では、基地を引き取って」。途端に「権力的沈黙」だ。「基地がある沖縄が好きなのだ」。政治的には「日本本土への基地引き取り」を強い口調で展開する。

 だが、これはあくまで方法論なのだ。論の根幹は「沖縄人が基地に反対するのは被害者だからではない。これ以上殺さないため、殺戮者にならないため」(17ページ)というところにある。

 沖縄戦と戦後の米軍の直接統治が、沖縄の心をいやおうなく腰の据わったものにした。その時空間を忘却し、無関心を装う日本人を著者は告発する。4年前、私は沖縄戦の継承ジャーナリズムを学ぶために沖縄に移り住んだ。厳しい目を意識している。私を含む日本人が今、どんな具体的行動に移るか、その眼差(まなざ)しが外されることはない。

 (藤原健・本紙客員編集委員)

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 のむら・こうや 1964年、美里村(現・沖縄市)生まれ。上智大大学院を経て2003年から広島修道大人文学部教授(社会学)。著書に「無意識の植民地主義」(御茶の水書房)、編書に「植民者へ」(松籟社)、共著に「社会学に正解はない」(同)など。

 

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