〈36〉海の危険生物に刺されたら 温める、冷やす、生物に応じて


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 沖縄県には毒を持つ危険な海洋生物が多数生息しています。県保健医療部の報告によれば、ハブクラゲやカツオノエボシなどのクラゲ類による被害例が最も多く、オニダルマオコゼなどのオコゼ類が続きます。ただし、これは医療機関が把握した数で、実際はゴンズイやカーエー(アイゴ)に刺されても病院に行かない人もいるでしょうから、それらの方が発生件数は多いかもしれません。

 ハブクラゲやオニダルマオコゼに刺された人が医療機関に行く理由はその強烈な痛みにあります。毒によるアナフィラキシーショックの危険もあるので、できるだけ早く医療機関を受診することが大切です。アナフィラキシーショックとは、急性で生命にかかわる危険性のある即時型の過敏性アレルギー反応です。

 受診するまでの応急処置として、温めたり、冷やしたりする方法があります。オコゼ類では43度程度の湯に60~90分間つけることにより毒が不活化し、痛みがやわらぎます。顔や胸、腹部の刺し傷や、出血を伴う傷があるときは湯を入れた袋を患部に当てます。

 一方、クラゲ類では氷や冷水などで冷やすと痛みが軽減します。もし触手が付着していたら、ハブクラゲは食酢で、その他のクラゲは海水で、触手を取った後に冷やします。

 クラゲ、オコゼに次いで多いのが「何に刺されたのか分からない」場合です。その場合、温めるか冷やすかは、やってみて効果のある方を選びます。温湯療法は、カサゴ、ゴンズイ、エイ、カーエー、ウニ類による毒に有効で、冷却はイソギンチャク、サンゴ、ガヤ類で有効です。温湯療法や冷却でも痛みが軽減しないときは、医療機関では消炎鎮痛剤の投与、ステロイド軟こうの塗布、神経ブロックなどを行います。

 ということで、海水浴に出掛けるときには、食酢、お湯、氷を持参するとよいのですが、それ以前にウオーターシューズ、ラッシュガード、クラゲローションなどによる予防が重要なのは言うまでもありません。

(田中浩二、北部地区医師会病院 救急科)