「おきなわ文化の祭典 大琉球浪漫シリーズ2019」第3弾「沖縄芝居公演」(琉球新報社主催)と銘打ち1日、那覇市の琉球新報ホールで開かれた時代歌劇「音楽家の恋」(伊良波尹吉作)と現代明朗歌劇「美人の妻 情の妻(一名・ポーポーハンシー)」(真境名由康作)。沖縄芝居研究会(伊良波さゆき代表)から役者が出演し、舞台は躍動感にあふれた。観客はベテランと若手実力派の姿に手を打ち、歓声を送った。
「音楽家の恋」は、音楽の才能あふれる玉村樽金(金城真次)が入れ揚げるジュリ・マカテー(知念亜希)と、樽金を振り向かせようと音楽を習う妻チルー(さゆき)らの恋の行方を描いた歌劇。
金城と知念、さゆきはほれぼれとする歌唱力で劇の要所を盛り上げた。二幕冒頭の金城と知念による「昭和節(ひじ小節)」は、艶っぽい所作とともに歌い上げて観客を劇の世界に引き込んだ。
下男の三良(嘉数道彦)と下女のマグジャー(伊禮門綾)が、「音楽を習っていることは樽金に言うな」というチルーの言葉を守り、樽金の追及をかわそうとする姿は、3人の息の合ったやりとりで笑わせた。滑稽な表情や所作を見せる嘉数と、すまし顔で間を外し笑いを生む伊禮門のバランスが絶妙で、観客を飽きさせなかった。最後に登場し「大岡裁き」をする玉村の父役の平良進、登場するだけで客席に笑いを起こしたパーパー役の大城常政らベテラン役者も貫禄を見せた。
「美人の妻―」は、カマデー(嘉数)の妻グジー(奥平由依)への真心を描いた作品。遊びに興じる子どもたちと瀬名波孝子演じるポーポー屋の無邪気なやりとりで、幕開け早々に観客の心をつかんだ。上演に際し文献をたどり、せりふの追加も含めて昭和初期の風情の再現に努めたという。奥平や儀間佳和子ら若手のすがすがしい演技とともに庶民の姿が生き生きと再現された。
さゆきは上演後「お客さまの温かい反応を見て、尹吉や由康先生の脚本や歌の力を感じた」と話した。
「沖縄芝居研究会」は若手中心だが、華があるだけでなく演技にも脂が乗り始め、固定のファンもいる。今後の沖縄芝居を引っ張る存在であることは間違いない。一方で、うちなーぐちの壁は高く、若年層の観客は少なかった。日本語を話す憲兵とうちなーぐちを話す老女とのちぐはぐなやりとりで笑いを誘う「首里登い小」のような、日本語を利用した新作創りにも期待したい。
(藤村謙吾)