玉城知事が掲げる沖縄県の重要政策とは… 【県政運営方針概要】


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県議会2月定例会で2020年度の県政運営方針を表明する玉城デニー知事=13日、県議会

I はじめに

 はいさい、ぐすーよー、ちゅーがなびら。

 第一に、「県政運営に取り組む決意について」申し上げます。

 昨年10月31日の首里城の火災の衝撃を思い起こすと、今でも胸が痛みますが、多くの皆さまからお見舞いの言葉や首里城の復旧・復興のための寄付金等が寄せられており、大きな励みとなっております。

 私は、皆さまの強い願いを実現させるため、国や那覇市などの関係機関と連携の下、首里城の一日も早い復旧・復興に全力で取り組みます。また、火災の検証結果を踏まえ、防火設備の強化や安全性の高い施設管理など、再発防止に向けて取り組んでまいります。

 今年1月8日に沖縄県では、33年ぶりに豚熱(CSF)の発生が確認され、国、市町村や関係団体、自衛隊等の協力の下、防疫措置に当たってまいりました。生産農家や県民の皆さまの不安を解消し、豚熱(CSF)の感染拡大を防止すべく、「沖縄県豚熱防疫対策関係者会議」における意見や提言等を踏まえ、予防的ワクチン接種を決定しており、必要な財源を確保し、まん延防止措置等に取り組んでおります。今後とも、国、生産農家、市町村、関係団体等と連携を図り、豚熱(CSF)の感染拡大防止対策、生産の早期回復に向け取り組んでまいります。

 新型コロナウイルス感染症への対応については、国や医療機関、観光分野をはじめとする関係機関等と連携し、県民への啓発を含めた予防等の感染対策の実施や医療提供体制の整備に取り組むとともに、県内の観光産業に対する影響を適切に把握し、その対策を講じてまいります。

 県では、令和元年度から全庁的にSDGsを推進しております。今後、全県的な展開につなげることで、新たな時代に対応した持続可能な沖縄の発展と誰一人取り残さない社会づくりを目指します。

 経済面においては、アジアの中心に位置する地理的優位性と、沖縄が誇るソフトパワーなどの強みを生かし、「沖縄県アジア経済戦略構想推進計画」に基づく施策の推進等により、アジアのダイナミズムを取り込み、県経済の発展および県民所得の向上を図ってまいります。

 また、県内産業の生産性の向上に取り組むとともに、収益力の強化等の取組を産業横断的に推進する「マーケティング戦略推進課(仮称)」を新設し、「企業の稼ぐ力」を強化することで、経済の波及効果を地方、離島、中小零細企業等にも浸透させ、所得の向上や県民の生活安定につなげてまいります。

 私は、日米安全保障体制が、地域の平和と安定の維持に寄与してきたものと認識しています。しかしながら戦後74年を経た現在もなお、国土面積の約0・6%の沖縄県に米軍専用施設の約70・3%が集中し続けている状況は異常と言わざるを得ません。

 内閣府の調査では国民の約8割が「日米安全保障体制は日本の平和と安全に役立っている」と回答しています。日本の安全保障が大事であるならば、基地負担の在り方についても日本全体で考え、その負担も日本国民全体で担うべきであります。このような基本認識の下、沖縄の過重な基地負担の軽減に取り組んでまいります。

 特に、辺野古新基地建設問題については、完了までに要する期間が約12年、総工費が当初の約4倍に相当する約9300億円になることが昨年12月に公表され、これまで県が指摘していたとおり、辺野古移設では、普天間飛行場の一日も早い危険性の除去にはつながらないということが明確になりました。

 この問題については、対話によって解決策を求めていくことが重要と考えており、政府に対し、普天間飛行場の早期の閉鎖・返還および一日も早い危険性の除去と相反することになる辺野古埋立工事を直ちに中止した上で、県との対話に応じるよう求めてまいります。

 一方で、普天間飛行場の固定化は絶対に許されないことから、辺野古移設に関わりなく、同飛行場の県外、国外への移設、早期閉鎖・返還および速やかな運用停止を含む危険性の除去を、政府に対し強く求めてまいります。

 私は、辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向けて、今後も、あきらめず、ぶれることなく、全身全霊をもって、県民の思いに応えてまいります。

 今年、戦後75年の節目の年を迎えます。戦争の悲惨さと平和の尊さを次世代に継承するとともに、沖縄全戦没者追悼式および広島市・長崎市平和祈念式典への相互参列など、平和を希求する「沖縄のこころ」を県内外へ力強く発信してまいります。

 「子どもの貧困対策」を最重要施策に掲げるとともに、「沖縄県子どもの権利を尊重し虐待から守る社会づくり条例」を制定し、全ての子どもたちが夢や希望を持って成長していける社会を実現してまいります。

 離島振興については、離島の諸課題を把握し、条件不利性を克服するため、IT環境の拡充による情報通信格差の是正をはじめ、交通・生活コストの低減、教育、医療、福祉等の定住条件の整備、離島地域の特色や魅力を生かした産業の振興に取り組みます。

 「琉球歴史文化の日(仮称)」の制定を通じ、各地域の伝統文化に対する県民の気運の醸成を図り、沖縄(ウチナー)文化のさらなる普及、継承、発展および発信に取り組みます。

 未来を担う子どもたち、若者たちに、平和で真に豊かな沖縄、誇りある沖縄、「新時代沖縄」を託せるよう、公約に掲げた諸施策を職員一丸となって推進し、全力で県政運営に当たる決意であります。

■沖縄を取り巻く現状の認識について

 国際社会においては、ビッグデータ、IoT、AI、デジタル技術の急速な進歩が、第4次産業革命とも呼ぶべき変化を世界にもたらし、あらゆる分野に大きな影響を与える時代となっております。また、気候変動の影響による自然災害の激甚化や、新型コロナウイルス感染症の広がりに見られるグローバルな人の移動による感染症の流行、世界人口の増加等による水・食料問題等の深刻化の可能性が指摘されており、国際社会の開発目標であるSDGsの着実な実施が重要とされております。

 沖縄県の経済は、令和元年の入域観光客数が約1016万人を記録し、7年連続で過去最高を更新したほか、情報通信産業についても、雇用者数が4万5千人、売上高が4400億円を超えております。

 雇用情勢については、令和元年平均の有効求人倍率が1・19倍、完全失業率が2・7%で、いずれも復帰後、最も良い数値を記録するなど、好調に推移しております。県経済は、一部に弱めの動きが見られるものの、基調としては緩やかに拡大することが見込まれておりますが、新型コロナウイルス感染症に関する観光産業等への影響をはじめ、海外発の経済の下方リスクや多くの産業で顕在化している人手不足の影響などに留意する必要があります。

■今後の沖縄振興に向けた取り組みについて

 令和2年度は、沖縄21世紀ビジョン基本計画等総点検の結果や新沖縄発展戦略を踏まえ、国と連携を図りながら新たな沖縄振興のあり方について検討するとともに、残り2年となる沖縄21世紀ビジョン基本計画の集大成に向け、全力で取り組む年となります。引き続き、県民所得の向上、子どもの貧困の解消、過重な基地負担の軽減等の重要課題に対応した施策を着実に推進してまいります。

 今年度に設置した万国津梁会議については、米軍基地問題、SDGsに加え、新たなテーマの会議についても設置し、この会議における議論をさらなる政策の推進につなげてまいります。

 私が掲げた公約については、その全てに着手したところであり、「新時代沖縄の到来」、「誇りある豊かさ」、「沖縄らしい優しい社会の構築」の三つの視点の下、引き続き諸施策を展開してまいります。

 「新時代沖縄の到来―経済分野―」については、成長するアジア経済に連動し、「沖縄県アジア経済戦略構想推進計画」に基づく取り組みを一層推進します。

 今年3月に供用開始が予定されている那覇空港第二滑走路については、航空会社の新規参入や就航路線の増加等、最大限の活用に向けて取り組み、沖縄が世界に誇れる観光リゾート地として発展していくことを目指します。

 県民生活と調和した持続的な観光振興を図るため、観光・環境協力税(仮称)の早期の導入に向けて取り組んでまいります。

 一般財団法人沖縄ITイノベーション戦略センターを活用し、県内各産業におけるAI、IoTなどの先進技術の活用促進や多様な実証事業の強化に取り組み、時空を超えるIT技術を駆使して、離島の不利性の解消にもつなげます。

 医療機関等との連携により、再生医療等の先端医療の産業化に向けた研究を推進するとともに、再生医療産業拠点の核となる細胞培養加工施設の整備に取り組んでまいります。

 沖縄MICE振興戦略に基づき、産学官連携による国内外のMICE誘致、受け入れ体制の強化、人材育成等に取り組むとともに、東海岸に、もう一つの南北に延びる経済の背骨を形成するため、「東海岸サンライズベルト構想」の策定に向けて取り組んでまいります。

 那覇港については、昨年4月に国土交通大臣から「国際旅客船拠点形成港湾」に指定され、22万トン級のクルーズ船が寄港可能な第2クルーズバースの整備に着手しており、引き続き、その早期整備に向け取り組みます。

 航空機整備を中心とする産業の集積を目指し、官民連携したプロモーション等の取り組みを行い、航空関連産業クラスターの形成を図ります。

 下地島空港については、周辺用地も含め、民間事業者のノウハウ等を活用した更なる利活用を促進します。

 畜産物、水産物等の県産ブランド化及び海外輸出体制の強化に向けて、高度衛生加工処理施設の整備等を促進します。

 鉄軌道を含む新たな公共交通システムの導入については、費用便益分析等の検討結果に基づき、国と調整を図るとともに、早期導入に向け、県民と一体となって機運醸成を図ってまいります。

 「誇りある豊かさ―平和分野―」については、戦後74年を経た今日もなお、過重な基地負担を強いられ続けている沖縄県民の負担の軽減を図るため、基地の整理縮小をはじめ、日米地位協定の抜本的な見直し、騒音問題や米軍人・軍属等による犯罪など基地から派生する諸問題の解決に全力で取り組んでまいります。

 基地の整理縮小については、県内移設を断念することを求める建白書の精神に基づき、普天間飛行場の閉鎖・撤去を求めるとともに、速やかな運用停止を含む危険性の除去を日米両政府に求めてまいります。

 嘉手納飛行場より南の施設・区域の返還については、統合計画の確実な実施とともに、内容の具体的な説明、地元意見の聴取の場の設置、跡地利用の円滑な推進等を引き続き政府に対して強く求めます。加えて、さらなる基地負担軽減策の検討のため、新たな協議の場を設けるよう日米両政府に対し求めてまいります。

 日米地位協定に関しては、ヨーロッパ4カ国を調査した結果、各国が航空法など自国の法律や規則を米軍にも適用させ、米軍の活動をコントロールすることで、自国の主権を確立していることが明らかになりました。国内法の適用等については、オーストラリアやフィリピンにおいても同様の状況であることが分かりました。同じ主権国家として、わが国においても米軍に国内法を適用することなどを日米両政府に強く求めます。3月には、韓国において調査を行い、調査結果を全国知事会や渉外知事会等とも共有し、日米地位協定の改定実現に向けた取り組みを強化してまいります。

 アジア諸国等の大規模災害時の支援活動や台風対策等について、本県が、国内外に貢献できるよう、JICA沖縄と連携及び協力を行いながら「国際災害救援センター(仮称)」の役割を検討するとともに、本県の地理的特性や歴史、沖縄のソフトパワーを活かし、国際交流、国際貢献を通じた平和の緩衝地帯の形成を目指してまいります。

 「沖縄らしい優しい社会の構築―生活分野―」については、子どもの貧困対策として、子どもの居場所等の設置拡充やネットワークづくりにより、地域における支援の輪を広げるとともに、専門的な個別支援を行う拠点型居場所や各分野の専門家を活用するなど、支援の質の向上に取り組みます。

 「沖縄子どもの未来県民会議」を中心に、子どもの学びと育ちを支える取り組みを県民一体となって推進してまいります。子どもの貧困対策として、中高生のバス通学無料化に向け取り組むとともに、引き続き、ひとり親家庭や生活に困窮する多子世帯などへの支援を推進してまいります。

 待機児童の解消につきましては、「第2期黄金っ子応援プラン」保育所の施設整備等への支援に加え、保育士確保等に重点を置いた施策の追加、拡充により、市町村の支援を強化し、令和3年度末までの待機児童の解消に向けて取り組んでまいります。

 認可外保育施設の入所児童の処遇向上に向けて、保育環境の安全確保に取り組むとともに、引き続き給食費や健康診断費等に対する支援を行います。

 放課後児童クラブについては、小学校等の公的施設を活用した設置促進等や運営費等に対する支援を行い、利用料金の低減、登録できない児童の解消に取り組みます。

 妊娠期から子育て期まで切れ目なく必要な支援を行う母子健康包括支援センターの設置を促進します。

 ジェンダー平等に関する取り組みの推進、女性のキャリア形成の促進に積極的に取り組みます。

 全ての県民の尊厳を守るため、人権啓発活動やLGBTの方々などへの偏見や差別をなくす取り組みを推進し、互いに尊重し合う共生の社会を目指します。

 北部圏域において、医師不足を抜本的に解消し、安定的かつ効率的で地域完結型の医療提供体制を構築するための北部基幹病院の整備に向け、関係者間の基本合意形成を図り、基本構想、基本計画の策定に向けて取り組みます。

 北部地区の教育環境の充実のため、中高一貫校の設置に向けて、取り組んでまいります。

 森や水及び水源地域に対する理解の促進と地域の振興を図るため、北部地域の水源の維持や環境保全、地域振興等、やんばるの森・いのちの水を守る取組を推進します。

 本島周辺離島8村への水道水の安定供給と料金低減などを図るため、水道広域化に取り組んでまいります。

 県外都市部における移住相談会や移住体験ツアーの開催など、UJIターン者の持続的受け入れに向けた取り組みを推進します。

 職員一人一人が、沖縄を愛する心をもって、意欲的かつ柔軟な発想で働くことができる職場づくりを進め、限りある行政資源の下で、多様な行政需要に対応する政策実現型組織の編成に取り組みます。

■内閣府予算案および税制改正について

 令和2年度内閣府沖縄振興予算案においては、県及び市町村が要望した概算要求の満額が確保されなかったこと、沖縄振興一括交付金が6年連続で減額となったことは残念でありますが、沖縄振興を推進するための経費として3千億円台が確保され、子どもの貧困対策、離島活性化の推進などが増額となり、小規模離島の海底送電ケーブルやテレワーク施設の整備が新たに盛り込まれました。

 令和2年度税制改正においては、五つの沖縄関係税制の延長が認められました。県としては、沖縄振興予算および税制のさらなる効果的な活用を図るため、県を挙げて推進体制を強化し、最大の効果が得られるよう沖縄の振興に全力で取り組んでまいります。


 

II 施策の概要

 第1「経済分野」に関して―新時代沖縄の到来の視点― 

■自立経済発展資源の創出

 持続的な県経済の成長・発展に向け、アジアの活力を取り込み、インフラの整備や海外におけるビジネス・ネットワークの連携強化、貿易、観光などアジアとの経済交流に向けた取り組みを効果的、効率的に進めてまいります。

 先端IT技術を各産業へ導入し、産業の高度化や生産性の向上等に取り組むとともに、企業の海外展開を牽引するグローバル人材、新たな産業の創出を牽引する起業家人材および県内産業の新たな成長に資する人材の育成等を推進します。

■社会資本・産業基盤の整備

 那覇空港第二滑走路の供用開始により、航空需要の増大が見込まれることから、空港の利便性向上に取り組むとともに、県内経済界等とも連携し、同空港に求められる将来の姿を描き、一層の機能強化および拡充に取り組んでまいります。

 那覇港については、昨年5月に開業した総合物流センターにおいて、集貨・創貨の促進を図るとともに、臨港道路の整備を推進します。

 中城湾港については、航路の拡充や産業支援港湾としての機能を高め、クルーズ船の受け入れについても、物流機能との共存を図り、持続可能な受け入れ体制の構築に取り組みます。

 本部港については、物流、人流機能の向上を図るとともに、大型クルーズ船の寄港に対応する岸壁等の整備を推進します。

 幹線道路網については、那覇空港自動車道および沖縄西海岸道路の整備を引き続き促進するとともに、南部東道路、浦添西原線等の整備を推進し、本島の南北軸と東西軸を結ぶ「ハシゴ道路ネットワーク」の早期構築に取り組みます。

■沖縄らしい観光リゾート地の形成

 沖縄観光ブランド「Be.Okinawa(ビー・オキナワ)」の更なる浸透を図るとともに、沖縄の豊かな自然や独自の歴史・文化、うちなーんちゅのチムグクルなどのソフトパワーを活用した世界水準の観光リゾート地の形成に取り組み、令和3年度までに観光収入1兆1千億円、入域観光客数1200万人等の達成を目指します。

 持続可能な発展と観光振興のバランスに配慮しつつ、SDGsの理念に即した沖縄観光の質の向上に取り組むとともに、地元収益の創出・拡大による観光関連産業の所得向上を目指します。

 観光客の著しい増加によって県民生活や自然環境に影響を及ぼす、いわゆる「オーバーツーリズム」については、市町村や観光協会等と連携を図り、諸問題の改善に向けた検討を進めてまいります。

 人材育成と受け入れ体制の強化を図るため、観光・環境協力税(仮称)の導入および「観光基金」の設置に向けた検討を進めます。

 海路客の誘致については、フライアンドクルーズの促進、南西諸島周遊クルーズおよびクルーズ展示会の誘致などを柱とした「東洋のカリブ構想」を強力に推進してまいります。

 空路客の誘致については、国内有数の国内航空路線網と拡大する国際航空路線網を活かし、経由便を活用した欧・米・豪からのトランジット客の誘致を強化するとともに、国内はもとより、台湾、香港等アジアの観光地と連携し、沖縄をアジア、日本を周遊する中継地の一つとする「国際旅客ハブ」の形成を図ります。

 外国人観光客の受け入れについては、観光関連従業者の対応力の強化や医療体制の充実など、環境の整備を推進します。

 「琉球王国のグスクおよび関連遺産群」については、適切な観光利用を図るとともに、世界遺産所在自治体の首長等が参加する「第7回世界遺産サミット」を開催し、世界遺産の保全や活用の取り組みを共有します。

 自然環境の活用については、農林水産業と連携したグリーン・ツーリズムなどの体験交流型観光を推進します。

 今年10月に県内で開催されるツーリズム・エキスポジャパンを通して世界に発信し、さらなる知名度向上を図ります。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けてスポーツツーリズムの推進に取り組みます。

■産業の振興と雇用の創出・安定

 リゾートとテクノロジーを掛け合わせたResorTech(リゾテック)をコンセプトとした国際IT見本市の開催、その実証事業の活性化等により、県内情報産業の高度化を図るとともに、さらなる企業集積のためアジアITビジネスセンターを整備するなど、アジア有数の国際情報通信拠点の形成を目指します。

 沖縄と首都圏・アジアを直結する国際情報通信ネットワークなどのインフラを活用したビジネスの展開を支援してまいります。

 再生医療等の研究を通じて先端医療技術の研究基盤を強化するとともに、産学共同による研究開発等を支援し、国際的な先端医療拠点の形成に向けて取り組みます。

 沖縄の多様な生物資源や地理的優位性等を生かした医薬品、医療機器、機能性食品等の研究開発および事業化を推進します。

 沖縄物産フェアの拡充や県内企業の販路開拓の支援等により、県産品の県外、アジア市場への販路拡大、販売促進を図るとともに、東京オリンピック・パラリンピックの機会をとらえ、県産品等の魅力を発信してまいります。

 更に、海外事務所等のネットワークを活用し、観光誘客、県内企業の海外展開、投資促進等、戦略的に施策を展開してまいります。民間企業との連携などにより、沖縄からアジアへ展開するビジネスモデルを創出し、商流・物流機能の拡充を図ることで、全国の特産品や半導体等高付加価値製品を迅速にアジアへ届ける流通プラットフォームの構築を推進します。

 国内最大級の個別マッチング型国際商談会「沖縄大交易会」を民間と共同で開催します。賃貸工場の整備や国際航空物流の拡充等を進め、アジアをつなぐ国際競争力ある物流拠点としての機能を強化し、臨空・臨港型産業の集積を促進してまいります。

 企業誘致については、国際物流拠点産業集積地域や情報通信産業振興地域、経済金融活性化特別地区等の特区や各種税制優遇措置などを活用し、半導体や電子部品製品関連などの高付加価値製品を製造する分野、航空関連産業分野および医療機器製造関連産業をはじめとする先端医療・健康・バイオ分野を中心とした産業の集積を図ります。

 沖縄振興特別措置法および復帰特別措置法に基づく各種税制措置の延長および拡充に向けて、経済界と連携して取り組んでまいります。

 県内ものづくり産業の振興については、付加価値の高い製品開発、基盤技術の高度化および生産性の向上や県内発注の促進に取り組むとともに、先端技術導入を図るため、国等の研究機関との連携や技術交流を推進してまいります。

 泡盛製造業については、リーディング企業の育成や経営が厳しい酒造所に対する改善支援など、経営状況に応じた総合的な支援策を展開するとともに、国との連携による海外輸出を促進します。

 伝統工芸産業については、後継者育成や原材料の安定確保、市場ニーズに対応した製品開発等に取り組むとともに、「おきなわ工芸の杜(もり)」の令和3年度供用開始を目指し、整備を進めてまいります。

 中小企業・小規模事業者の支援については、沖縄県中小企業の振興に関する条例の一部を改正し、情報通信技術の活用による生産性の向上、経営基盤の強化、事業承継や資金調達の円滑化などを総合的に推進します。

 近年新たな役割を求められている商工会・商工会議所等の支援体制強化に取り組むとともに、市町村と連携した商店街への支援等を実施し、県内商業の活性化を図ります。

 エネルギーについては、SDGsの理念に基づき、効率かつ環境負荷の低いクリーンエネルギーを推進するため、沖縄の地域特性を活かした再生可能エネルギーの普及拡大を図るとともに、島しょ型エネルギー技術開発や、関連企業の海外展開を促進します。

 雇用の安定については、若年者等の就業意識の向上や求人と求職のミスマッチの解消を図るため、インターンシップやジョブトレーニングなどを実施し、職場定着の推進に引き続き取り組んでまいります。

 雇用の質の改善については、優れた人材育成の取り組みを行っている企業の認証制度の活用促進や、ワーク・ライフ・バランスの推進、正規雇用の拡大、働きやすい環境づくりなどに取り組む企業に対し、各種支援施策を展開するとともに、産業横断的なマーケティング力を強化するなど、「企業の稼ぐ力」に資する取り組みを推進し、県民所得の向上、ひいては子どもの貧困の解消につながるよう取り組んでまいります。

 人手不足については、処遇の改善など労働環境の整備をはじめ、県外からのUJIターンの促進による人材の確保に取り組むとともに、企業のIT活用や設備導入への支援を強化し、外国人材の活用などについても、全庁的に各業界の取り組みを促進してまいります。

■農林水産業の振興

 農林水産業の振興に向けて、戦略品目による拠点産地の形成、おきなわブランドの創出を目指した研究開発、担い手の育成・確保、生産基盤の整備、6次産業化、国内外への販路開拓などに積極的に取り組みます。

 基幹作物であるサトウキビについては、引き続き、安定生産に向け取り組むとともに、製糖工場の安定操業に向けた老朽化対策の支援などに取り組んでまいります。

 島しょ県の流通条件の不利性による負担を軽減するため、引き続き輸送コスト低減対策を推進するとともに、中央卸売市場の機能強化を図ります。

 農地利用については、農地中間管理機構等を通じて、新規就農者や法人経営体などの担い手の農地利用拡大に取り組んでまいります。

 畜産業については、経営基盤の強化、飼料コスト低減対策および牛乳の安定供給に向けた生産供給体制の強化、特定家畜伝染病侵入防止対策の強化に取り組みます。

 豚熱(CSF)発生農家や制限区域内生産農家への手当や助成等の経営支援に取り組みます。

 林業については、環境保全に配慮した森林施業を実施し、県産木材の安定供給や特用林産物の生産拡大を図ります。

 水産業については、漁業就業者の確保および育成に向け、新規漁業就業者を対象とした漁具等の漁業経費の支援などに取り組みます。漁船が自由かつ安全に操業できる漁場の確保に向けて、ホテル・ホテル訓練区域における使用制限の解除対象水域の拡大及び対象漁業の拡充や、日台漁業取決め及び日中漁業協定等の見直しを求めるとともに、日台漁業取決めの影響緩和のための基金を活用し、漁業者の安全操業の確保や水産経営の安定化など、水産業の振興に取り組んでまいります。

 尖閣諸島を巡る情勢につきましては、中国公船が領海侵入を繰り返しており、宮古、八重山地域の住民に不安を与えております。県民の平穏な生活環境および県内漁業者の安全確保に向けて、国に要請するとともに、国の関係機関との連携を強化しているところです。

 パラオ共和国の排他的経済水域(EEZ)における本県まぐろはえ縄漁船の安定的な操業継続に向けて、パラオ共和国との水産技術交流等に関するMOU締結を進め、友好関係の強化に取り組みます。

 国際貿易交渉については、TPP11(イレブン)協定、日EU・EPA、日米貿易協定等の貿易自由化への対応として、TPP等対策予算を措置し、農林水産業の体質強化対策や経営安定対策に取り組みます。

 第2 「平和分野」に関して―誇りある豊かさの視点― 

■国際交流・協力の推進

 10月30日の「世界のウチナーンチュの日」を中心に、県内外や世界各地でさまざまな活動が展開されるようウチナーネットワークの継承および発展に向けた取組を推進するとともに、「第7回世界のウチナーンチュ大会」の令和3年開催に向け取り組んでまいります。

 JICA沖縄と連携して、県内の高校生を開発途上国に派遣するとともに、県内の中学・高校で国際協力出前講座を実施し、将来の国際協力を担う人材を育成します。

■基地問題の解決と駐留軍用地の跡地利用

 米軍人・軍属等による事件・事故や日常的に発生する航空機騒音をはじめPFOS等の環境問題のほか、実弾射撃演習による原野火災など米軍基地に起因する相次ぐ事件・事故は、県民生活にさまざまな影響を与えております。

 このような米軍基地から派生する諸問題を解決するため、日米地位協定の抜本的な見直しや、環境補足協定に係る環境事故の通報基準の見直し等を国に求めてまいります。

 県としては、引き続きオスプレイの配備撤回を求めるほか、米軍機による事故等が発生した際、地元への通報が遅れる事案が度々発生していることから、連絡通報体制の検証、改善を求めるとともに、政府の対応に県の考えを反映させるため、政府、米軍及び沖縄県を構成員とする新たな協議会の設置などを国に求め、県民の懸念や不安の払拭を図ってまいります。

 辺野古新基地建設問題については、これまでに小金井市議会や小平市議会等の地方議会で、国民的議論で問題解決を求める意見書等が採択されており、全国において沖縄の基地問題について議論が深まりつつあると考えております。今後も、法令に基づく権限を適切に行使するほか、全国でのトークキャラバンによる情報発信を行うことなどにより、県民投票結果をはじめとする辺野古新基地建設に反対する県民世論およびそれを踏まえた私の考えを広く国内外に伝え、国民的議論を喚起し、理解と協力を促してまいります。

 沖縄の基地問題の解決に向け、米国側の理解と協力を求めることが重要であると考えており、沖縄の米軍基地をめぐる諸問題について、私が直接訪米し、米国政府、米国連邦議会議員等に対し、地元の実情を伝えるとともに、米国ワシントンDCに設置した駐在員を活用し、米国内での情報収集及び情報発信、国連との連携や有識者と連携した会議の開催及び連邦議会関係者への働きかけや沖縄への招へいに取り組んでまいります。

 米軍基地の整理縮小については、SACO合意の内容とは異なる現在の辺野古新基地建設を除き、既に日米両政府で合意されたSACO最終報告及び再編に基づく統合計画で示された基地の整理縮小の確実な実施のほか、SACO以降の基地の整理縮小の検証及び沖縄の基地負担軽減策の検討のため、日米両政府に沖縄県を加えた3者で協議(SACWO)を行うことを、日米両政府に対し求めてまいります。

 米軍基地問題に関する万国津梁会議での議論を踏まえ、県の政策や取り組みに反映し、米軍基地の整理縮小につなげていきたいと考えております。普天間飛行場をはじめとした返還予定地については、関係市町村等と連携を図り、跡地利用計画の策定を促進します。

 戦後処理問題については、不発弾処理の早期解決に取り組むとともに、沖縄戦における戦没者の遺骨収集の加速化を図ります。

 所有者不明土地問題について、抜本的解決に向けた取り組みの加速化とともに、県民の貴重な財産として有効活用が図られるよう、国に求めてまいります。

■沖縄から世界へ、平和の発信

 戦後75年の節目となる今年は、第10回沖縄平和賞の贈賞を実施するとともに、シンポジウムの開催等により、平和を希求する「沖縄のこころ」を世界に力強く発信します。

 今年度に創設した「ちゅらうちなー草の根平和貢献賞」受賞者の活動内容の広報、平和の礎や平和祈念資料館を通じて、沖縄戦の歴史的教訓の次世代への継承に注力するとともに、新たに沖縄戦を語り継ぐ活動を行う団体・個人を表彰するなど、恒久平和の実現に向けて、取り組んでまいります。

 第3「生活分野」に関して―沖縄らしい優しい社会の構築の視点― 

■地域力の向上・くらしの向上について

 地域の課題解決に向けて、ボランティア、NPO活動などへ県民が主体的に参加できる仕組みづくりや、県民や地域組織、企業等の多様な主体が連携した取組を促進してまいります。

 民生委員・児童委員の活動環境の改善と充足率向上を図るとともに、適切な福祉サービスが利用できる体制の構築を推進します。

■世界に誇る沖縄の自然環境を守る

 SDGsの理念に基づき、自然環境の保全の啓発に努めます。

 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産の確実な登録に向け、国等と連携をさらに強化し、新たに制定した「沖縄県希少野生動植物保護条例」に基づく希少種の保護や外来種対策など、自然環境の保全に取り組みます。

 生物多様性の保全上重要な情報収集・調査研究・教育普及の拠点となる「国立自然史博物館」の誘致については、官民一体となった取り組みを進めてまいります。

 県民一体となった緑化活動をより一層推進するとともに、亜熱帯の特性を生かした沖縄らしい花と緑の景観形成等を目指し、全島緑化を推進します。

 令和元年度に完成した公共関与による産業廃棄物管理型最終処分場における適正処理を推進します。

 県内の海岸漂着物の回収処理を推進するとともに、国際的な課題である海洋プラスチック等の抑制に向けた陸域の発生源対策等に取り組みます。

■歴史と誇りある伝統文化の継承と発展

 各地域において大切に受け継がれてきた沖縄(ウチナー)文化の根底をなすチムグクルを育むため、「しまくとぅば普及センター」を中核に市町村や教育関係機関等と連携したしまくとぅばの普及活動及び人材育成、アーカイブの活用等を推進するとともに、組踊や琉球舞踊、沖縄芝居など多様で豊かな伝統文化の継承、発展を図るため、後継者育成や基盤強化に取り組みます。

 沖縄が世界に誇る伝統文化である空手を保存・継承・発展させるため、指導者・後継者の育成を図り、沖縄空手会館を拠点に「空手発祥の地・沖縄」をSNS等の活用により国内外に強力に発信するとともに、受け入れ体制を強化し、交流人口の拡大を図ります。あわせて、ユネスコ無形文化遺産の登録に向けた県民機運の醸成や、沖縄空手国際大会の定期開催等の取り組みを通じ、沖縄空手振興ビジョンで示す将来像の実現に向けて取り組んでまいります。

■医療の充実・健康福祉社会の実現

 2040年までに平均寿命日本一を取り戻すため、働き盛り世代の健康に対する意識の変革を促すとともに、事業所における健康づくりの支援を行うなど、引き続き、健康長寿復活プロジェクトを推進します。

 昨年制定した「沖縄県歯科口腔保健の推進に関する条例」に基づき、「沖縄県歯科口腔保健推進計画」を策定し、歯科口腔保健対策の強化に取り組みます。

 こども医療費助成制度については、私の任期中に通院の対象年齢の拡大を実現することができるよう、引き続き市町村との協議を進めてまいります。

 地域医療の強化を図るため、北部、離島地域の医師不足及び県内全域における医師の診療科偏在の解消などに取り組んでまいります。

 薬剤師確保については、薬剤師の需給予測および県内国公立薬学部設置の可能性等について調査してまいります。

 西普天間住宅地区跡地において、国際性・離島の特性を踏まえた沖縄健康医療拠点の形成を促進します。

 障害のある人に対する誤解や偏見等をなくす取り組みを推進するとともに、手話の普及啓発、発達障害に対する地域支援体制の整備など、障害者の地域生活支援に取り組みます。

 生活困窮者への支援については、相談体制の充実及び地域における関係機関とのネットワークの強化に取り組んでまいります。

 世代にかかわらず課題となっているひきこもりの問題については、市町村と連携しながら、効果的な調査や支援が行えるよう、その体制づくりに取り組んでまいります。

■子育て・高齢者施策の推進

 子どもの貧困対策については、「沖縄県子どもの貧困対策推進基金」を活用した就学援助等の充実を図るほか、国、市町村と連携して、子どもの居場所や貧困対策支援員の活動支援を強化するとともに、県立高校内の居場所における生徒の就学継続に向けた支援や、小規模離島町村への支援員派遣などに取り組みます。

 中央児童相談所およびコザ児童相談所に一時保護等の介入対応を行う「初期対応班(仮称)」を設置し、児童虐待防止対策の強化を図ります。

 介護サービスの充実など、地域の実情に応じた地域包括ケアシステムを深化・推進するとともに、介護人材の確保対策や認知症施策の強化に取り組みます。また、入所待機者の解消に向け、特別養護老人ホーム等の施設整備の支援に取り組みます。

■安心・安全で快適な社会づくり

 人に優しい交通手段の確保に向けて、昨年9月に基幹急行バス「でいごライナー」の運行を開始したところであり、引き続き、基幹バスシステムの構築を推進するとともに、バス運転手確保の取り組みを支援してまいります。

 住環境の整備については、県営南風原第二団地、新川団地等の建替を推進するとともに、民間住宅の省エネ化やバリアフリー化を図るため、住宅リフォームを促進します。高齢者等の住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への入居支援の促進に向けて取り組みます。

■離島力の向上

 離島航路および航空路の交通コストの低減、情報通信格差の是正、離島からの高校進学等の支援など、定住条件の整備に取り組みます。離島診療所への医師派遣、専門医による巡回診療による医療提供体制の確保や離島患者の経済的負担の軽減に取り組みます。離島におけるガソリン価格や水道料金等の生活コストの低減に取り組むとともに、離島航路に就航する船舶建造の支援などにより、交通基盤の整備を推進します。

■教育振興

 学校教育については、教員の指導力および学校組織力の向上、授業改善等により、小中学校の学力向上を図ります。児童生徒との継続的な関わりによる生徒指導の充実を図るため、引き続き正規教員率の改善に取り組みます。