県経営者協会(金城克也会長)は13日、第34回県経営者大会を那覇市の沖縄ハーバービューホテルで開催した。「令和時代を生き抜く企業戦略とイノベーション」をテーマに、前関西経済同友会代表幹事でコクヨ会長の黒田章裕氏、将棋棋士八段の杉本昌隆氏、プレゼンテーションクリエイターの前田鎌利氏、日本女子プロゴルフ協会会長の小林浩美氏が講演した。主催者あいさつで金城会長は、県内経済が観光産業や民間の設備投資、消費購買力に支えられ順調に成長している一方で、足元では消費増税や新型肺炎の感染拡大、人手不足などによって課題が顕在化していると指摘。「企業の存続と発展のために時代を見据え、働き方改革を推し進めるとともに、イノベーションを起こしていかなければならない」とあいさつした。
「悩みの種」発見が重要 黒田章裕氏 コクヨ会長
われわれは人口構成の大転換期にいる。若年層が多かった19世紀型から、2030~40年ごろには高齢者層の多い21世紀型に移行し安定するが、現在は年齢の構成比率が大きく変わっていく転換期だ。これまでは厳しい競争を勝ち抜くことで経済的な成長を達成した。これからは誰かを踏みつけてでも競争に勝つことから、「wellbeing(良好な状態)」を達成する思考へ変わるべきだ。
顧客の潜在的なペインポイント(悩みの種)を見つけて、そこに合わせて商品やサービスを提供していく必要がある。以前は一番数の多い中間層のペインポイントを解決することが多かった。しかし、今後は数が少なくても一番困っている層に合わせて商品やサービスを通じて価値を提供することで、他の層にも波及していける。
例えばイスラエルのテルアビブ市では、貧民街をなくすためにベンチャー企業に資金を提供して、テクノロジーで解決することを求めた。うまく行けばイスラエルだけでなく、世界中の同様の問題を抱えている都市で展開ができる。少数者の悩みだからと解決をあきらめるのではなく、世界に広げることもできる。
強み生かすことが大事 杉本昌隆氏 将棋棋士八段
普段は将棋のプロ棋士として毎日勝負の場にいる。藤井聡太七段の師匠といった方が皆さんには分かりやすいかもしれない。
対局で差し手を決断する時は、3通りほどに絞るのがいいとされる。選ぶ基準は(1)最短の勝利(2)最悪(リスク)の回避(3)自分の強みが生きる展開―の三つ。定跡もあるが個性が大事であり、得意な展開に持ち込むこと、自分の武器を知ることが勝利への近道だ。
私と藤井七段は、会社で言うと上司と部下に近いと思う。弟子には優秀な子もそうでない子もいる。藤井七段より2番手、3番手をどう育てるかに気を遣ってきた。むしろ周りを強くすることで彼にとっても、それ以外の弟子にもプラスになると考えた。
教えすぎないこと、結果を求めすぎないことも大事だ。弟子に期待し、時には頼ることもいい効果を生む場合がある。仮に負けたとしても、その人が能力を完全に発揮できた対局は次につながる。
その人の個性、持ち味を伸ばすことは大切だ。経営者の皆さんは長い目で部下、社員を見てあげてほしい。各社員が「自分の強みを生かす」ことができれば成果にもつながるだろう。
意思決定の回数増必要 前田鎌利氏 プレゼンテーションクリエイター
これまで17年間、いろいろな会社でビジネスをしてきて常にスピードを求められてきた。実績を残すには意思決定の回数を増やす必要がある。経営者は毎日のように、限られた時間の中で意思決定を求められる。経営者だけではなく、管理職も従業員も意思決定をやる必要がある。生産性は意思決定の数に比例する。
大事なのは「7割」の考え方だ。仕事の期限ぎりぎりまで使って100%を追求したとしても、上司からやり直しを求められる可能性がある。50%の段階では不十分だ。7割なら上司の意思決定に耐えられるデータがそろった状態と言える。ただ7割の基準は人によって異なるので、日頃からそれぞれの考え方を伝えるようにした方がいい。
「外脳」という考え方も重要だ。それは外部の力を借りること、外の脳を生かすことだ。自分の足りない部分をオープンにして、周囲の助けを得られる人は業績も伸ばせる。
会議の品質を上げることも求められる。意思決定をするために参加者に考えを聞いてもらい、コメントをもらう場所にしてほしい。議題の優先順位をつけて、結論から話すことでスムーズに進行できる。
立ち止まらずに改革を 小林浩美氏 日本女子プロゴルフ協会会長
私がアメリカツアーで、初優勝するまでの3年間は七転八倒だった。高校3年の時に父の勧めでゴルフを始め、プロになった。プロになって5年目に年間6勝を挙げ、賞金ランキングで2位になった。27歳でアメリカツアーに参戦した。
アメリカの生活は食事や移動、言葉など多くの壁にぶつかった。ゴルフでは芝質などの環境面の違いや、世界の強豪選手が集まる中で思うように結果が出せず悩んだ。
ゴルフを続けるか自問自答したが、中途半端に終わりたくない気持ちが強かった。その時に日本で残した成績が足かせになっていたと気付いた。「振り向けば日本がある」という考えをやめ、「アメリカしかない」と勝利に執着するようになり、試合の内容や成績が良くなった。成功体験に頼らず「絶対勝つ」という執念を持つことが大切だ。
協会として、客が楽しいと思うポイントが何か、協会でそれを取り組めているか考える必要がある。女子プロゴルフの歴史を発展させ改善したい。同じことを繰り返して発展することはない。立ち止まらずに、選手やゴルフ界、ゴルフファンのためにも常に改革することが不可欠だ。