<社説>JA店舗再編計画 地域との意見交換緊密に


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 県農業協同組合(JAおきなわ)は20日の経営管理委員会で経営健全化に向けた店舗再編計画を協議したが、地域への説明が先だという意見が多数を占め、この日の決定を見送った。

 既に名護市や本部町、大宜味村では支店の存続を求める住民運動が起きている。農業地域の生産基盤を損なうことがあってはならず、農家に不安を与えない慎重な作業が必要だ。
 計画は、信用・共済の金融業務の窓口などがある県内102店舗を、2022年3月までに77店舗に減らしていく案となっている。一方で支店廃止による影響が出ないよう、一部の支店跡を「よりそいプラザ」とし、専門相談ブースや組合員の交流の場を提供するほか、金融取引ができる「移動金融店舗車」などを配置するとしている。
 再編を迫られる背景には、低金利による貸出金利息や有価証券利息の減少が続くなど、金融事業の収益が悪化していることがある。日銀のマイナス金利政策の導入を受け、融資量を増やすことで貸出金利の低下をカバーしようと金融機関間の競争が激化している。利ざやで収益を上げることが難しくなり、農協に限らずメガバンクや全国地銀でも経費削減のため店舗の統廃合が進んでいる。
 国内農業は日米貿易協定や環太平洋連携協定(TPP)などで、外国産の安い農産物との競争がますます激しくなることが想定される。農家の営農指導を担うJAおきなわが経営を安定させることは、沖縄の農業を守っていく上で必要な取り組みと言える。
 他方、農協の信用事業は銀行など、営利を目的とした株式会社とは異なり、農家の相互扶助を基本とする協同組織金融機関だ。経営改善を進めるにしても組合員の合意形成が前提となる。
 住民の高齢化と減少が進む地域ほど事業の採算性は低くなる。しかし、そうした地域ほど農協以外にサービスの担い手が乏しい。地域における支店の役割も信用事業にとどまらない。農業振興から地域の人々の交流まで多彩な機能を果たしている。
 協同組合の役割を必要とする地域の声を切り捨てる形になってはいけない。
 今回の再編計画に対する反発の広がりを見ると、組合員への説明が十分ではなく、性急さが感じられる。地域の拠点がなくなり、生活に支障を来してしまうという利用者の意見に真摯(しんし)に耳を傾け、その声を踏まえた対応を丁寧に説明しなければ理解は得られないだろう。
 店舗の存続を要請している行政や議会も一体となって地域の拠点機能を支えていくためにも、農家の生産基盤を守るという農協本来の姿勢をしっかり示していくことがまずは必要だ。その上で農協の経営課題と改革の方向性について、地域と緊密な意見交換を進めてほしい。