「言葉の暴力は身体的な暴力に変わっていく」 人権・差別で法学者の谷口真由美さんが講座 沖縄でのヘイト防止条例制定訴え


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沖縄に向けられる差別やヘイトスピーチの現状について講演する谷口真由美さん=15日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館講堂

 差別と人権を考える公開講座「いまさらですが、人権って何でしょう」(部落解放・人権研究所主催)が15日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館講堂で開かれた。同研究所第二部門長で国際人権法、ジェンダー法が専門の法学者、谷口真由美さんが講演し、沖縄に向けられる差別やヘイトスピーチの現状に触れながら「なぜ誰にも止める権限はないのか」と指摘、沖縄県内でのヘイト防止条例制定の必要性に言及した。

 谷口さんは、これまでの人権研究により、言葉の暴力は身体的な暴力へと変わっていくことが立証されているとして「言葉の段階で止めないといけない」と強調した。「ルールが変わると人の意識が変わる。明らかに特定の人をおとしめている、苦しめている、嫌がらせしているのを取り締まる規定を設けるのは大事なことだ」と話した。

 沖縄と憲法については「(米国統治下で)憲法から外されていた沖縄が(日本復帰後に)憲法を『獲得』したという言葉は重い。本土の人よりも人権に対して敏感に努力してきたと思う」と述べた。

 米軍基地がある沖縄や原発事故が起きた福島を念頭に「孤立させず連帯して自由と人権を獲得し続けていく必要がある。終わりがない。生きてる限り頑張らないといけない」と力を込めた。

 同研究所業務執行理事の川口泰司さんによる「部落差別ってなに」と題した講話では2000年代以降には、インターネットの普及により、ネット上に差別偏見情報が氾濫し、部落地名や人名リストがさらされるなど新たな差別が深刻化している状況を報告した。

 講座は26、27の両日に県内で初開催される第34回人権啓発研究集会に先立つ講座として開催された。