BEGINの比嘉栄昇、島袋優、上地等はデビュー10周年を機会に一つのミニアルバム「ビギンの島唄~オモトタケオ~」を制作した。発売されたのは九州・沖縄サミットの開催日である2000年7月21日。それまでブルースを基調とした音楽を届けてきた3人は、このアルバムを境に栄昇が三線の弦をはじき、琉球音階を使った作品を送り出すようになった。
「濃いBEGINを出そう」と3人を際立たせるような演奏で収録した。守礼門が印刷された2千円札一枚で買えるように、金額は2千円に設定した。優は「沖縄のメロディーや楽器を使った音楽はこれまでも作っていた」と話す。「涙そうそう」や「かりゆしの夜」「風よ」など、ほとんどの曲に沖縄の音色が入ったアルバムは初めてだった。
1990年代後半以降、県出身アーティストが全国規模で活躍するなど沖縄ブームが到来する。九州・沖縄サミットによって「沖縄」が注目を集めた。「うちなーんちゅも日本人」であることを証明するために誰にも負けないくらいのきれいな日本語で歌うと志していた3人。「時代の流れとともにある種その役割は終え、次にいっていいんじゃないか」(栄昇)と次への段階に進む。「沖縄の曲を作ることをずっと封印してきたから、全国区になるような島唄をつくりたいと思った」
デビュー当時から3人を見てきたアミューズ元社長の松崎澄夫さんは述懐する。「本場のブルースをまねるのではなく、自分たちの世界観を大切にしたいと3人は思っている」と当時栄昇が発した言葉が今でも記憶に残る。「『自分たちの奏でるブルースは島唄だ』と確信して沖縄のブルースをつくった」とも栄昇は話した。
県外で「涙そうそう」を紹介した時はラジオのパーソナリティーから「なみだそうそう」と言われた。「何度も間違われるから悔しかった。でもBEGINの島唄を届けられてうれしかった」と等は笑顔で語った。
BEGINはその後も「島人ぬ宝」や「オジー自慢のオリオンビール」「三線の花」といったオリジナルの曲を世に出していき、沖縄を代表する「島唄」となった。
(金城実倫)