「沖縄に移住する」 比嘉栄昇の決断がメンバーや曲に与えた影響とは… 〈「うたの島」から世界へ BEGIN30年の歩み〉⑤


この記事を書いた人 問山栄恵
シングル「その時生まれたもの」のジャケット(テイチクエンタテインメント提供)

 「沖縄に移住する―」。BEGINの比嘉栄昇、島袋優、上地等の3人はデビュー以来、10年余り東京で活動し、音楽を発信してきた。しかし2001年、栄昇が突然沖縄への移住を決断した。

 「最初聞いた時は(音楽を)やめるのではないかと不安に思った」。所属事務所であるアミューズの元社長、松崎澄夫さんは振り返る。

 栄昇は、所属事務所があり他のメンバーのいる東京を離れるのはかなりリスキーな決断だと分かっていた。それでも「全国の人が沖縄の音楽を受け入れてくれたのだから、地元沖縄で音楽活動しても大丈夫」と決心した。

 等も「(沖縄に移住すると言われた時)最初はびっくりした。でも栄昇が沖縄にいることによって自分たちも沖縄に行きやすくなる」とすぐさま良い方向に考えたという。

 実際、栄昇の沖縄移住によって、優も等も沖縄に帰る回数が増えた。優は「自分に入ってくる沖縄の情報がこれまでより多く伝わってきたし、何より沖縄のミュージシャンや音楽関係者との関係が深まった」と回想する。さらに「沖縄でレコーディングをするという発想も生まれて、とてもうれしかった」と笑顔で語る。

 BEGINはその後、「島人ぬ宝」「オジー自慢のオリオンビール」「その時生まれたもの」など、沖縄の美しい情景やウチナーンチュに寄り添った歌詞とメロディーを次々と作っていった。

 松崎さんは「栄昇の沖縄移住によって、想像ではないありのままの沖縄の日常を音楽にすることができた。結果、多くの人の共感を得て、彼らの軸ができた」という見方を示す。

 栄昇が移住した同じ年に3人は新たな挑戦を沖縄で始めた。それは音楽フェスティバル「うたの日」コンサートを始めることだった。 (金城実倫)

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