相次ぐ投票事務拒否…沖縄弁護士会が立ち上がった 判断の経緯は立場を超え「おかしいと言えるなら」


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県民投票の全県実施を求める声明を出したことについて語る天方徹さん=21日、那覇市内

 2019年1月、辺野古新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票の告示(2月14日)が迫る中、県内は先行きが見えない状況だった。沖縄、うるま、宜野湾、宮古島、石垣の5市が投票事務の実施を拒否。全県実施が危ぶまれ、県民投票の意義が揺らごうとしていた。

 こうした中、沖縄弁護士会の天方徹会長(当時)は1月11日、会長声明を発表。「直接民主主義の意義を没却する、ゆゆしき事態と言わなければならない」と厳しい言葉で全県実施を強く求めた。

 強制加入団体である沖縄弁護士会で、天方さんは自ら声明の発表を提案した。「一方的な政治的立場を応援するようなものは、いくら会長が出したいと言っても不適切とされる。常議員会という意思決定機関で承認をもらう通例に従って過程を経た。政治的な立場に限らず、おかしいと言えるならいいのでは、と」

 声明では、民主主義や地方自治の本旨などの普遍的な意義を強調した。
 自らの政治的立場を保守と位置付ける天方さん。「個人の尊厳と法の下の平等という普遍的に保護されなければならない価値を守るに保守もリベラルも関係ない。当たり前の話じゃないですか」と明快に語る。

 当時、県民投票の全県実施が不透明だったことについて「県民投票に協力しない自治体の人たちの政治的な表現の自由や民主主義への参画を奪うだけではない。歯抜けの県民投票になれば、全県的に意義が大きく減殺することになる」と危惧していた。

 1999年に弁護士として沖縄に来て20年が過ぎた。司法修習生だったとき、代理署名訴訟に関心はあったものの「自分事ではなく、本質的なおかしさにも全然気付いていなかった」と振り返る。

 沖縄弁護士会の会長だった2019年12月には、臨時総会で辺野古の問題について主体的に考えることを日本国民に呼び掛ける決議を提案した。
 今も辺野古の工事が止まらないことに歯がゆさを感じている。「政府が、県民以外の国民が、沖縄を軽んじている。今一度、国民に自分事として考えてもらう必要がある」と訴えた。
 (安富智希)