「これで本当にいいのか」 沖縄で若者たちを追い続け映画にした双子の兄弟 透けてみえる本音に…


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県民投票について話す都鳥伸也監督(右)と撮影の拓也さん兄弟=19日、岩手県北上市内のホテル

 画面に大写しになった沖縄の若い女性が話している。「分断しているのが一番嫌。若い人は分断をなくしたいとの共通な意見は持っている」

 岩手県出身の映画監督・都鳥伸也さん(37)と撮影担当の拓也さん(37)の双子の兄弟が、辺野古新基地建設を巡る県民投票に取り組む沖縄の若者を1年間追い続けた。冒頭はそのドキュメンタリー映画「私たちが生まれた島~OKINAWA2018~」の一場面だ。

 都鳥兄弟は2017年に、米統治下の沖縄の戦後史を記録した「OKINAWA1965」を制作した。その全国上映で「基地反対は60代ぐらいまでで、若い世代は関係ないと思っているんでしょ」「若い人は辺野古にも賛成なんでしょ」などの声に接した。確かに前作で若い人の声は聞いていない。「沖縄に生まれた若者たちの言葉を伝えなければ」。そんな思いでカメラを回した。

 撮影で「まだどっちか分からない」と話す県内の女子高生や、「基地があってもいいと思っていたが、浅い考えだった」と考えを変えていく同級生の姿に触れ「県外の人間が考えるような単純なことではない」と気付かされる。

 県民投票の中で若者が掲げた「話そう基地のこと 決めよう沖縄の未来」の標語。監督の伸也さんは「なかなか議論のテーブルに上がらない問題に気付いてもらうための策だったと思うが、こうした問題提起にとても共感した」と振り返る。沖縄の若者の動きに「反対、賛成ありきではない、本当の意味での民主主義がそこにある」と話し、全国の若者たちにも勇気を与えたとみている。

 辺野古埋め立てに反対多数の民意が出たが、一方でその後も工事は続いている。投票から1年がたち「辺野古問題で本土の理解が必要なのは確か。本土にボールは投げられたといわれているが、県外の人のほとんどがそれに気付いていない」と実感する。政府も国民もあまり変わっていない。映画は「これで本当にいいのか」と本土に問い続けている。
 (滝本匠)