議事録なしは問題、市の説明放棄に 石垣自衛隊配備巡る市有地処分 井上禎男・琉大法科大学院教授


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井上禎男教授 琉大法科大学院

 石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の予定地に含まれる市有地の処分について審議・決定した市幹部で構成する市公有財産検討員会が、詳細な発言などを記録した議事録をこれまで作成していなかった件で、野党は決定過程の不透明さを指摘する一方で、市は適正だったと問題ではないとの立場を取る。公文書管理に詳しい井上禎男琉球大法科大学院教授に談話を寄せてもらった。

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 行政が市民に関わる重要な意思決定を行う場で、あえて議事録を作成しない理由として、個人あるいは個人情報を取り沙汰することが適切なのか。意思決定の過程は記録として残しておかなければ正確性を欠く。のちに検証することさえできなくなる。

 市は公有財産検討委員会について、意見を言い合って結論を出す場ではないとしているが、委員会であるのなら、委員はそれぞれの立場で確認し質疑を行い、意見を述べるはずである。職務時間中に開かれる合議体であり、ただおしゃべりをしているわけではない。「委員会」と名の付く合議体の記録なのだから、一個人のメモではなく組織共用される。

 まずは記録として議事録を残し、行政文書として位置付ける。その上で市民からの開示請求があれば、個人情報あるいは意思形成過程情報、または行政執行情報に該当することを理由に、記載された情報を不開示とすることが筋だろう。自己あるいは外部からの検証機会を奪い、十分な説明責任を放棄するという意味で極めて問題だ。

 市が「会議録」としているのは、いわゆる議事要旨というものだ。会議によっては議事要旨だけを残すことはある。ただ市長の意思決定を左右するような重要な合議体の議論を検証する場合、議事要旨だけで対応できるのか。議事録をきちんと残して、事後的な検証・確認の機会を奪わないようにすべきである。

 録音データもないという。裏を返せば、議事録もなく、録音データすらない「委員会」が、本当に市民に関わる重要な判断を行う際の意思決定の場であって良いのかということにもなってくる。
 (行政法)