八重山教科書問題の舞台裏を語り合う 前文科次官の前川氏と元竹富町教育長が対談


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八重山教科書問題の当時を振り返る前川喜平氏(左)と慶田盛安三氏=13日、石垣市民会館大ホール

 【八重山】元文部科学事務次官の前川喜平氏を招いた教育講演会(同実行委員会主催)がこのほど、石垣市民会館大ホールで開かれた。八重山の教科書問題当時にやりとりした元竹富町教育長の慶田盛安三氏との対談もあり、解決に向けた水面下の舞台裏を振り返った。

 八重山の教科書問題では中学校公民の教科書について、共同採択地区である八重山3市町の採択協議会は保守色が強いと指摘される育鵬社版を答申。一方で竹富町教育委員会は答申に従わずに東京書籍版を採択し、国は是正要求を出すなどして町教委への圧力を強めた。

 講演会で、是正要求当時に初等中等教育局長だった前川氏は「是正要求に根拠はない」と感じていたと話した。表向きは当時の県教育長や慶田盛氏に圧力を掛ける演技をしつつ、竹富町を共同採択地区から外せるよう教科書無償措置法の改正の検討を進めていたとし、慶田盛氏らにも「法改正までやり過ごしてほしいと伝えていた」と明かした。

 慶田盛氏は当時、報道陣の前で指導する前川氏に「言葉には力がない印象があって、本意ではないなと感じていた」と振り返った。前川氏と面談した後の記者会見では、前川氏の文科省内での立場をおもんぱかり「『2千キロも離れた場所からはるばる来たのに、理解してもらえなかった』と実際の話とは逆の厳しい話ばかりした」と笑顔で話した。

 慶田盛氏は教科書について「平和な社会を守るために、憲法9条がどのように書かれているかを重要視した」と話した。前川氏は「平和をどう支えていくかは学校教育の大きな使命の一つだ。公民や歴史教科書にこだわるのは非常に大事だと思う」と応えた。

 基調講演で前川氏は道徳教科化などを例に、権力の教育への介入に強い危機感を示した。