琉球交響楽団(琉響)は今年で創立20周年を迎える。琉響は元NHK交響楽団(N響)の首席トランペット奏者で県立芸術大学教授だった故・祖堅方正らが中心となって設立した。指揮者で設立当時から音楽監督を務める大友直人と息を合わせて年2回の定期公演や地域公演などで壮大なハーモニーを響かせ、県民にプロが奏でるクラシック音楽を届けてきた。大友に琉響のこれまでの活動の成果と課題について聞いた。 (聞き手 金城実倫)
―琉響に携わったきっかけは。
「1993年に桐朋学園時代からお世話になった祖堅先生から県立芸大音楽学部の1期生による卒業演奏会で指揮をしてほしいと声を掛けてもらった。その時に先生はよく『芸大卒業生が音楽の専門家として活動できる場を沖縄でつくりたい』と話していたので共感した。先生の思いと自分の考えを重ね合わせ、設立時から音楽監督として携わっている」
―沖縄は音楽的にどんな場所だと感じるか。
「音楽が鳴ると自然と歌い踊る沖縄の方々の姿に感銘を受けた。あらゆる場所で芸能文化と生活が一体となって根付いている、全国的にも特別な場所だ」
―琉響の20年を経た実績と課題は。
「現在、団員数は34人いる。大変優秀な人材がそろっていて県内各地で年間80回にも及ぶ演奏をこなし、音楽の楽しさや素晴らしさを伝えている」
「一方で20年が経過しても団員一人一人がオケだけで生活できるような財政基盤には至っていない。N響や県外の交響楽団は自治体や企業のサポートによって、安心して演奏活動に従事している。琉響が継続して演奏活動を行えるように、さらに多くの方々に応援していただけるような流れをつくっていきたい」
―4日には萩森英明さんが作曲し、大友さんがタクトを振った「沖縄交響歳時記」(リスペクトレコード)をリリースする。
「沖縄の四季をイメージしてつくられた全6楽章からなる作品だ。新年を祝う古典音楽のメロディーやエイサーを連想させる音色などを織り交ぜ、琉響の演奏によってより沖縄らしさを感じさせる作品だ。昨年11月、ルーマニア・ブカレストで地元の交響楽団の指揮を担当した時に第2楽章と第3楽章を演奏してもらった。生き生きとした沖縄の香り漂うメロディーはブカレストのクラシックファンも感動してくれた。4月3日には沖縄で全曲初演を飾る。ぜひ聴いてほしい」
―4月6日には東京のサントリーホールで初の県外公演が実現する。
「おかげさまでチケットは完売した。公演ではピアニストの辻井伸行さんと協演するほか、トリは新曲『沖縄交響歳時記』を演奏するという点でも大きい。東京では全国のクラシックファンが駆け付け、初めて生で琉響の演奏を聴く人もいるはずだ。観客の反応がとても楽しみだ」
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アルバム「沖縄交響歳時記」は税抜き3000円。琉響初の東京公演を記念した特別演奏会は4月3日午後7時から浦添市のアイム・ユニバースてだこホール大ホールで開催される。曲目はベートーベン「運命」や萩森英明「沖縄交響歳時記」など。入場料は前売り券が一般3000円、大学生以下1500円、親子券3500円(当日各500円増し)。問い合わせは琉響事務局(電話)090(9783)7645。