行き場を失う給食用牛乳 52万本分が余剰に 酪農農家の経営打撃 新型コロナ臨時休校の影響


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県酪農農業協同組合=2日、八重瀬町友寄

 新型コロナウイルスの感染拡大防止でほとんどの小中学校が臨時休校となる中で、学校給食用の牛乳が行き場を失っている。沖縄県内9割以上の酪農農家が加盟する県酪農農業協同組合(八重瀬町)は生産量の約50%を学校給食向けに供給しており、県内の主な乳飲料メーカーの試算で、臨時休校期間中に生乳約500トン(946ミリリットルパック約52万本分)の余剰が出る見込みとなっている。

 県酪農農業協同組合は2日、農家や乳飲料メーカー、県、沖縄総合事務局の職員らを集めて対策会議を緊急に開き、牛乳を廃棄しないための方策などを話し合った。給食用の販売がなくなることで酪農経営や乳飲料メーカーに与える経営的な打撃も大きく、関係者は対応を急ぐ。

 同組合は1日約60トンの生乳の販売を農家から受託し、半数の約30トンを学校給食用として沖縄明治乳業、沖縄森永乳業、宮平乳業の3社に販売している。生産量全体の半数を学校給食に供給するのは全国的にも高い比率となっている。

 県内には生乳タンクが足りず余剰分を保管する容量に限りがあるといい、「脱脂粉乳に加工する工場もなく、代替の用途が限られてしまう」(宮平乳牛の宮平隆一社長)など、メーカーの間にも先行きに懸念が広がっている。

 関係者の間では、県内で製造する加工乳や乳製品に含まれる生乳の混入率を上げることを軸に対応を検討している。だが、加工乳は生乳と違って安価なため、現在1キロ当たり135円の乳価を下げなければならないなど生産農家に負担が生じる。

 加工乳に使用した場合の差額を補填(ほてん)するよう、組合として県や総合事務局に要請した。
 (石井恵理菜)