重圧乗り越え躍進 タンブリング日本代表 又吉健斗 周囲の支え原動力に


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
又吉 健斗

 タンブリング日本代表で最年少でエースを張る又吉健斗(具志川東中―静岡・磐田東高―静岡産業大1年、同大クラブ)が飛躍の1年間を振り返った。今季最後の大一番だった3月の全日本選手権は新型コロナウイルスの影響でなくなったものの、念願の日本代表入りや初出場したワールドカップでの4位入賞など躍進の年になった。代表のプレッシャーを感じながらの日々は「とにかく苦しかった。でも一番成長できた」と大きくレベルを上げる契機となった。 (古川峻)

 昨年3月、優勝が期待された全日本選手権は2位に終わった。本番の重圧から普段ならありえないミスが出た。これを教訓に、精神面の弱さを克服しようと挑む大会ごとに「自分が一番強い」とあえて自らを追い込み続けた。その結果、ステップアップするように目標の成績を達成していった。

 最大の舞台は昨年11月の東京での世界選手権だった。ナショナルチームで又吉だけが成功させることができる高難度の「後方伸身2回宙返り3回ひねり」を最後の大技として用いる構成にこだわった。失敗のリスクを恐れて監督やコーチから反対されたが、練習で成功させることで周囲を認めさせていった。

 しかし大会2日前、自国開催であることやかつてない期待を感じて押しつぶされかかる。「逃げたい。やめたい」と一人で泣いた。直前練習も不調から途中で切り上げ、仲間に初めて弱音を吐いた。踏ん切りがついたのはスタッフから「やらない方が悔いが残る。失敗を恐れるな」と後押しを受けてからだった。準備してきた大技を入れることに決めた。

 迎えた本番、大技は連続技8本の最後だった。直前練習では試しておらず、ぶっつけだったが、7本目を着地した瞬間に「いける」と分かったという。回転中は周囲の様子がスローモーションのようになり、無音の状態。着地を決めた瞬間に一度に歓声が押し寄せた。日本勢トップの67・900で自己ベストを更新し、19位。ワールドゲームズへの出場枠を約20年ぶりに日本が勝ち取ることに貢献した。「あの場にいたことが今でも実感がない」と夢見心地の様子で振り返った。

 昨年の雪辱を誓った全日本選手権は中止になり「心にぽっかりと穴が空いた」この春だが、帰省中にかつて在籍した体操教室のジュニアらを指導したことで、競技が楽しくて仕方なかったかつての自分を思い出し、リフレッシュできたという。周囲の支えの大きさにも改めて向き合い「悔しいのは自分だけじゃなかった」と思い直してさらなる活躍への原動力に変える。来季は公式戦での採点で自己ベストを上回る72点取りを目指す。「修行するのみ」。自分に言い聞かせるように覚悟を語った。