寄稿 国際女性デーに寄せて 「女性」である楽しさ つらさ トーマ・ヒロコ


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 ストッキングを脱いだ時の解放感。そもそもなぜ女性はストッキングを履くのだろうか。毎月来る生理。何であんなにきついのに、平気なふりをして生活しないといけないのだろうか。

 女性であることは、楽しいこともあるけれど、つらいことや生きづらさもたくさんある。女性を取り巻く問題や、ムーブメントに強く関心を持っている。昨年は、パンプス強制反対署名運動#KuToo、生理用品の購入時に、紙袋に入れることを見直す#NoBagForMe、女性のメガネ禁止の企業の話題などが気になった。

 わたしは昨年6月に10年ぶりとなる第3詩集「パスタを巻く」を刊行した。2009年から2018年に書いた詩を収録している。20代後半から30代前半に書いた詩だ。「できないふり美人」という詩の前半を抜粋する。

「パスタを巻く」(ボーダーインク・1515円)

隣の奥さんは機械が苦手
プリンターの使い方がわからない
タイマー録画もできない
だから全部ご主人任せ
ある日隣の娘は見てしまった
奥さん、本当はプリンターを使いこなせるの
タイマー録画だってできるの
だけどできないふりをしてご主人に頼る
ご主人がいないと何もできない奥さんになりきるの

 男性が選ぶ方で、女性が選ばれる方だという構図があり、女性は弱いふり、無知なふりをするのが賢いとされる。「追いかけるより追わせろ」「男性から告白やプロポーズをさせるには」という内容の、ネットの恋愛コラムの見出しが躍る。あざとい女性が最初は疎まれていても、そのうち「結局何だかんだ言ってうらやましい」と同性の憧れの対象になることも興味深い。

 女性同士の人間関係がドロドロしていることを期待する男性の目もある。女子会という存在に異常な関心を持つ男性もしかり。

 詩集のタイトルになった詩「パスタを巻く」は次のように始まる。

パスタを巻きつける
くるくるくるとフォークに
いつものカフェのカウンター
パスタは止まらない
わたしの願望のように

すてきな恋愛
あたたかな家族
認めてもらえる仕事
素朴で鋭い詩
響き合うわたしたちの歌声

ようやく止まったパスタ
フォークに巻きついたそれを
一口でほおばるのは難しい

 仕事も恋愛や結婚も成功させたいと強く願う。願望がたくさんあっても、早く叶(かな)うこと、遅く叶うこと、そもそも叶わないこともある。独身の女性が男性と同じように働けば働くほど、出産のタイムリミットが気になる。不安を抱きつつも、何食わぬ顔をして生きていく。社会的に作られる「女性らしさ」に流されたり、違和感を覚えたりしながら過ごしていく。女性として生きる楽しさとつらさ、どちらも味わいながら、もっと女性が生きやすくなり、輝いていけることを切に願う。

(詩人)