〈41〉排せつの問題 薬の前に生活習慣改善


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 人は食べ物を食べ、消化・吸収し、排せつして生きています。口から肛門までの消化管は、引き延ばせば全長7メートル、表面積は500平方メートルになると言われています。食べた物は消化酵素によって分解され、必要な物は体に吸収され、不必要な物は便として排出されます。このサイクルに障害が出るとどうなるのか。慢性便秘について取り上げてみます(大腸がんや炎症に伴う便秘は除きます)。

 一般的に便秘症は、週に3日以上排便がなく、おなかが張る、腹痛、残便感で生活に支障が出ることを指します。最近では、排便回数にかかわらず、排便困難感や残便感等の排便障害があれば、便秘症と言われています。

 便秘症は、50歳以下の若年者では女性の比率が高いのですが、加齢とともに男女差はなくなります。

 便秘症で、腹部膨満、腹痛、食欲減退、意欲の低下等、生活全般に支障をきたし、生命予後にも影響すると言われています。

 便秘があると、血圧上昇、脳血管障害や心疾患の誘発、慢性呼吸器疾患では低酸素血症の悪化が見られます。また便秘で腸管内に腎毒性物質が蓄積し、腎機能が悪化することも明らかになりました。高齢者では生活機能全般の低下の原因にもなります。

 排便に大きな影響を与えるのは、水分と食物繊維です。米、パン、ゴボウ、カボチャ、豆、キノコ類に含まれる不溶性繊維は便の量を増やし、果物、葉物野菜、海藻に含まれる水溶性は便を柔らかくします。そのバランスが大事で、不溶性の繊維に偏ると便は逆に硬くなり、便秘症状が悪化します。ヨーグルトや納豆等の発酵食品も、腸内環境が整えられ、善玉菌が増えて便秘を改善します。

 良質の食物油を取ることも大事です。ウオーキングや腹部マッサージも有効です。また排便時の姿勢も大事で、前傾姿勢では直腸が直線化して腹筋が収縮しやすく、排便を促しやすいと言われています。

 安易に便秘薬を飲む前に、今一度生活習慣を見直してみてはどうでしょうか。

(平田晴男、平田胃腸科・内科、消化器内科)