【記者解説】有機フッ素目標値、焦点は米軍基地調査の実現


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 環境省の有識者検討会がPFOS、PFOAの水環境下における目標値として1リットル当たり50ナノグラムを了承した。今後は県内でPFOSなどの重大な汚染源と見られている基地内の立ち入り調査が実現するかが焦点となるが、今回の目標値の位置付けは法的拘束力がない「指針値(暫定)」という弱い表現となっており、これまで米軍に配慮してきた日本政府が立ち入り調査を強く求めるかは不明だ。

 PFOSの米軍基地内調査は国内の規制基準がないことから、米側に実質的に拒否されてきた経緯がある。環境補足協定上、米側からの情報提供を端緒に立ち入りが行われるという壁も立ちはだかる。環境省は「指針値(暫定)」という位置付けが「どう米側から評価されるかは分からない」と吐露。調査の実現につながるかは不透明だ。

 今回の目標値が正式に決まれば、国や都道府県は河川や地下水などの水環境下における物質のモニタリング実施に努めることが求められることになる。

 知見の収集が進むPFOSなどの国内における監視を強めることにつながり、目安となる値を示したことは一定の評価ができる。

 一方、県によるこれまでの調査でも、50ナノグラムを大幅に上回る結果が相次いで報告されている。罰則規定がない中で地下水の汚染除去がどこまで実現するかも課題となる。

(知念征尚)