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栄光を極めた一人の女優の絶望と焦燥。居場所はステージの上だと分かっているのに、そこからも逃げ出したい、説明のつかない恐怖。凡人には計り知れない闇をまといながらも、舞台で演じる女優はすごみを増して美しい。
「オズの魔法使い」で17歳にして、一躍スターダムにのし上がったジュディ・ガーランド。華やかな世界とはうらはらに、一人の少女の青春も人間らしさも搾取していく業界の大人たち。最愛の子どもたちとも引き離され歌うことしか残されていないのに、歌うことが恐怖でしかないジュディ。華やかな部分しか表に出てこないスターの絶望の中から絞り出される歌声に戦慄(せんりつ)する。
何はおいてもジュディを演じるレネー・ゼルウィガーの演技はお見事。47歳で急逝したジュディの説明のしようのない心の揺らぎや恐怖を、繊細かつ丁寧に表現し、ゼルウィガーの最後の舞台のすごみは、ジュディの弱さも愚かしさも全て超越して迫ってくる。監督はルパート・グールド。
(スターシアターズ・榮慶子)