【記者解説】観光業好調を背景に土地需要伸び地価最高 新型コロナの影響は?


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2020年1月1日現在の県内地価は、全用途の平均変動率がプラス10・9%となり、4年連続で全国1位となった。観光産業の好調さを背景に土地需要が伸び続けた結果、上昇率は統計の残る1976年以降で過去最高を更新した。新型コロナウイルスによる感染症が発生し、県内にも感染が広がったことで今後の情勢は不透明になりつつあるが、少なくとも19年末までは県経済が順調に拡大していることが示された。

 観光需要の伸びはホテル建設など、県外や国外からの投資を呼び込んだ。土産品店や飲食店、ドラッグストアなど外国人客をターゲットにした店舗の需要も高まった。商品を供給する製造業や物流業の需要増など幅広い産業に波及して商業地、工業地の地価を押し上げた。

 県内の人口は増加し、低金利の環境下で住宅需要が強まり、住宅地の地価上昇が続く要因になった。県土の狭さから需要に対する供給量は少なく、那覇市など都市部の住宅適地は平均的な世帯では手が出せないほど高騰した。郊外に住宅を求める層が増えたことから、糸満市や読谷村の住宅地価格も上昇した。

 2019年は日韓関係の悪化で韓国からの観光客が激減し、米中貿易摩擦による中国経済の減退などマイナス要因もあった。一方で国内客は堅調に推移したことなどから、県内の観光産業に与える影響は限定的だった。セブン―イレブンの進出やサンエー浦添西海岸パルコシティの開業などプラスの要因も多く、県内の地価を押し下げる要素は見当たらなかった。

 新型コロナの影響が直ちに地価に波及するか不透明な部分は多い。08年のリーマン・ショックや11年の東日本大震災など、経済が大きく落ち込む時期に地価も下がる傾向も見られる。高騰した地価が一気に反転する事態になると、県経済に大打撃を与えかねない。近年の上昇率が全国上位だった沖縄は、他の都道府県以上に影響を受けることになる。こうした影響を最小限に抑えるため、行政や関係機関の十分かつ的確な支援が求められる。

(外間愛也)