「住宅地」「商業地」「工業地」の用途別地価の特徴は…


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 国土交通省は18日、2020年1月1日現在の公示地価を発表した。沖縄県内地価の全用途の平均変動率は前年比1・6ポイント増のプラス10・9%で、7年連続上昇した。上昇率は4年連続で全国1位となった。住宅地、商業地、工業地の用途別の特徴を紹介する。

住宅地は那覇を中心に高騰 上昇率は読谷が最も高く

 県内の住宅地の公示地価は、平均変動率が前年比1・0ポイント増のプラス9・5%となり、7年連続の上昇だった。那覇市を中心に浦添市や宜野湾市、北谷町などで平均価格が高騰しており、読谷村や糸満市など都心部から離れた市町村が平均変動率の上位に入ったほか、観光客の急増などで活況を呈した宮古島市も上昇率上位に食い込んだ。

 市町村別で最も上昇率が大きかったのは読谷村のプラス21・2%で、上昇幅は前年よりも10・4ポイント拡大した。1平方メートル当たり平均価格は5万4300円で、平均価格1位の那覇市の1平方メートル当たり17万7千円と比較すると3分の1以下で割安感がある。那覇近郊で地価が高騰し、郊外に住宅を求める層が増えている。

 海沿いの住宅地は景観の良さなどから元々一定の人気があり、近年は国道58号沿いの大湾東地区に商業施設が整備され地価上昇につながっている。

 上昇率2位の糸満市は、2017年に沖縄西海岸道路糸満道路と豊見城道路が4車線化され利便性が向上。中心部には商業施設や公園が整い、1平方メートル当たり6万8千円の価格も手頃感があり、住宅購入者の選択肢として浮上している。

 4位の宮古島市は、前年は調査対象の21市町村中19位だった。ホテルの建設ラッシュや、観光に付随するレンタカー業などの増加により、建設作業員や観光関連業の従業員の住宅需要が急速に高まった。地価は1平方メートル当たり2万2700円と他地域より安価なため、変動率の上昇度合いが大きくなった。

商業地は宮古がホテル建設ラッシュで急騰

 県内商業地の公示地価は前年比3・0ポイント増のプラス13・3%だった。近年、観光客が急増している宮古島市の上昇率は前年比24・5ポイント増のプラス27・3%と急騰し、前年の15位から1位になった。観光客の急増とホテル建設ラッシュなど「宮古島バブル」と呼ばれるほどの好況さが商業地価格を大きく押し上げた。

 那覇市や宜野湾市、北谷町、浦添市など都市部で上昇率が高い傾向がある一方、住宅地と同様に宮古島市や読谷村が上位に入るなど新たな状況も見られた。

 宮古島市は18年度の入域観光客数が前年度比15・6%増の114万人となったほか、19年度も20年1月までに約97万人に達している。クルーズ船寄港回数の増加や下地島空港の開業などが寄与し、宿泊業や飲食業の土地需要が急激に高まった。観光収入の増加で雇用環境や所得も改善し、域内消費が活発化したこともプラス要因となった。

 上昇率2位は那覇市で、前年比2・6ポイント増のプラス20・1%だった。ホテルや商業施設の需要が高い状態が続いており、県内企業の事業拡大や県外の進出企業の事務所需要なども相まって、大幅に上昇した。国際通り近辺など中心部は代替地がなく、需給関係から高騰している面もある。

 上昇率が最下位の名護市の2・3%を除き、調査地点のある17市町村中16市町村で全国平均の3・1%を上回った。下位の地域でも全国と比較すると上位の水準にある。

工業地はセブン開業が地価上昇につながる

 県内工業地の平均変動率は前年比3・1ポイント増のプラス20・9%で、全国平均の同1・8%と比較すると上昇率の高さが際立っている。観光の好調さから物流倉庫や食品製造工場の需要が高まる一方、倉庫や工場が建てられるほどの広さの用地供給がほぼないのが現状だという。住宅地、商業地以上に全国との差が大きく、県内の工業地不足を示している。

 工業地の調査地点はいずれも那覇空港や那覇港からアクセスの良い西海岸沿いに立地している。豊見城市豊崎はプラス32・1%で、糸満市西崎は同31・8%と全国でも突出して高い。那覇市港町は同15・3%、浦添市は西洲と港川の2地点平均で同12・7%だった。

 平均価格は那覇市の13万6千円から糸満市の5万100円まで幅があり、価格面で優位性のある糸満や豊見城の工業地の上昇率がさらに高まる要因となった。

 供給量が圧倒的に足りない状況が続く中、2019年はセブン―イレブンやサンエー浦添西海岸パルコシティの開業などもあり、地価の上昇につながった。