家族と共にスペインに渡航していた沖縄本島中部在住の10代女性が新型コロナウイルスに感染していることが21日、判明した。約1カ月ぶりとなる県内在住者の感染確認は、学校や一部の商業施設が再開した矢先だっただけに観光業界などを落胆させた一方、会員制交流サイト(SNS)上では女性と家族への非難が相次いでいる。専門家は防疫体制の見直しを求め「市民側も感染を拡大させないという当事者意識を持つことが大事だ」と呼び掛けている。
「終息の兆しが見えていただけに残念だ」。県内在住者の約1カ月ぶりの感染確認に、営業面で打撃を受けている観光業界の関係者からは嘆き節が漏れた。
先週から小中高校の臨時休校が解除され、一部の商業施設も営業を再開しており、この関係者は「客足が戻る期待感があった」と話す。その矢先での新たな感染の確認に、「これでまた振り出しだ。イメージ回復のためには、さらに時間が必要になる」と肩を落とした。
県によると、感染が確認された10代女性ら家族は成田空港での待機要請を待たずに移動していた。待機要請に応じた場合、宿泊費など多額の自己負担が生じるため、県は「戻る選択をしたのでは」と推測した。その行動についてツイッターなどでは「とんでもない話だ」と非難が殺到。「個人の医療に対するリテラシーを信じきるのはリスク」「欧米のように厳重に取り締まらないとダメ」などの書き込みも相次いでいる。検疫所からの要請に強制力がなく、航空会社が搭乗を止められなかった点など、防疫体制の課題も露呈した。
感染症に詳しい厚生労働省の元医系技官で、一般社団法人パブリックヘルス協議会代表理事の木村盛世さんは「感染疑いのある人の行動を規定する指針を決めないと、今後も同様の問題が出てくる。検疫所と航空会社との連携も不可欠だ」と指摘。その上で「海外でこれだけ感染が広がる中で、日本だけが安全という認識は甘い。感染のピークはこれからやってくる。一人一人が感染拡大をさせないという当事者意識を持たなければいけない」と話した。