在宅勤務、子連れ勤務… 企業、社員の働き方で工夫 〈急転・沖縄経済 新型コロナショック〉⑩


在宅勤務、子連れ勤務… 企業、社員の働き方で工夫 〈急転・沖縄経済 新型コロナショック〉⑩
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 新型コロナウイルスによる感染症の拡大は観光業界のみならず、多くの県内企業に影響を与えているが、現状を打開しようと新たな取り組みを進める企業も出始めている。緊急時でも事業継続できる体制づくりや働き方見直しの機会と捉え在宅勤務の拡充に取り組む企業、終息後のV字回復を狙い綿密な分析を進める企業、子連れ出勤を臨時導入して従業員が継続的に働ける体制を整える企業など、各企業がさまざまな対策を取っている。

 沖縄セルラー電話(那覇市)は、新型コロナの感染防止対策で社員の出社が難しくなる事態も想定される中で、災害時など万が一の事態でも事業を継続できる体制を構築するため、3月に試験的に在宅勤務を実施した。重要業務に携わる職員90人を選定して自宅で業務に当たらせ、社の業務に支障が出るかを検証した。

 1週間ほど在宅勤務に取り組んだ社員もいたが、結果的に業務が滞る事態は生じず、在宅勤務の有用性を確認できたという。

 担当者は「在宅でも多くの業務がこなせることを検証できた。チャットやメールなど文字だけで調整すると細かいニュアンスが伝わりにくいとか、指示を即時に伝えることが難しいなど改善点も見つかった」と意義を強調する。

 4月以降に社の規定を変更して在宅勤務を制度化し、希望者を募ることも予定している。災害時や感染症の流行など緊急時の対応だけでなく、子育て世代や親の介護を抱えた世代の働き方にも応用できると考えている。

 ホテルカヌチャベイリゾート(名護市)は宿泊客を「国内個人客」「団体客」「クルーズ客」などの客層ごとに、今後の利用動向を詳細に分析している。特に「新型コロナウイルスの影響で海外旅行に行けなくなった客」を新たなターゲットに盛り込み、戦略を練っている。

 社内会議で社員1人当たり10個のアイデアを出すなど、新たな商品開発に力を入れる。5月から沖縄の自然をテーマに、新月と満月の日に全施設の照明を落とし、夜空を楽しむ企画を予定する。

 短期間で人事をローテーションさせ、フロント業務のスタッフが客室清掃に回るなど、各従業員が複数の仕事を覚えることで作業を効率的に回す仕組みづくりにも取り組み始めた。宿泊客の減少で生じた時間的な余裕を有効活用し、社員が慣れない部署の仕事を覚える機会にしている。

 2019年に入域客1千万人の大台を達成した観光にけん引されてきた沖縄経済は、試練の時が続く。ホテルカヌチャベイリゾートの白石武博社長は「今だからこそできることがある。夏までには客を戻したい」とV字回復へ意気込んだ。

(外間愛也、中村優希)