〈43〉子どもが漢方薬? 飲みやすい味もある


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 「子どもが漢方薬なんて飲めるんですか? だって苦いんですよね!」。子どもが漢方薬なんて飲めるはずはないと頭から決めつけて、駄目でもともとなのに試そうともしない親御さんが大勢います。

 そういう時に私は言います。「だったら江戸時代の親御さん方は子どもが病気になっても治療しないで諦めてたんでしょうかね? 昔は漢方薬しかなかったんですから」。そもそも苦いものは飲めないという思い込みは何でしょう? 子どもも大人もゴーヤーチャンプルーが大好きな沖縄の皆さんの言葉とは思えません。

 しかも、漢方薬が苦いというのも完全な先入観です。もちろん苦いものが多いのですが、他にも辛いもの、酸っぱいもの、そして甘いものだってあります。

 先日、1歳8カ月の男の子が度々泣き入りひきつけを起こすと相談がありました。これは、小さなお子さんが激しく泣き始めた後に息を止め、顔色が真っ青になり手足が硬くなって、しばらくしてぐったりする病気です。てんかんではありません。

 この男の子には甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)という漢方薬を処方しました。飲み始めて数日以後は全く起こさなくなりました。併せて、ひどかった夜泣きも軽くなりました。

 この甘麦大棗湯の中身は、小麦と、ナツメの果実と、天然甘味料に使う甘草です。まさにお菓子のような配合ですから、とても甘いのです。人気のお菓子のように「とてもおいしい」とまでは言えないけれど、好んで飲みたがる子どもたちはたくさんいます。

 ちなみに泣き入りひきつけは鉄剤が一部の子に効くことはありますが、西洋医学では他に良い薬がありません。漢方薬は飲めないものと決めつけて試そうともせず、子どもが泣き入りひきつけを起こすたびに困っているという話を聞くにつけ、残念な気がしてなりません。

 最近は漢方薬を処方する先生も増えています。かかりつけの小児科や漢方専門の先生に一度ご相談してみてはいかがでしょうか。

(梁哲成 日本東洋医学会専門医・指導医 小児科)