「辺野古が唯一」を崩す新たな沖縄の論理 万国津梁会議の提言を読み解く


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 沖縄県が有識者の意見を政策に反映させるために設置した「米軍基地問題に関する万国津梁(しんりょう)会議」は26日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に固執せず在沖米軍基地を県外・国外へ分散することで段階的に整理縮小させるべきだとする提言書を玉城デニー知事に手渡した。知事への提言は、米軍普天間飛行場の危険性除去には「名護市辺野古が唯一」とする政府の主張を突き崩す新たな「沖縄の論理」となる。法廷闘争など政府と県の対立・政局に注目が集まる中、国際情勢を踏まえた広い視点から沖縄の基地問題を捉え直している。

 万国津梁会議は提言書で、普天間飛行場の危険性を除去する方法として長い期間かかる辺野古移設は現実的でないと指摘する。

 在沖米軍基地の分散移転先の具体的な地名は出していない。沖縄の過重な基地負担を軽くしていくために県外・国外への分散を提案するもので、狭い意味の代替案を示したものではないことを示す。

 一方、普天間飛行場の危険除去の手法として別の道筋を提示したという意味では「知事から危険除去のためにどうするか語られていない」(菅義偉官房長官)などと批判してきた政府への応答になっている。

 辺野古新基地建設の予定地に広がる軟弱地盤のため、政府は米軍が使えるまでに少なくとも12年かかると説明していることに触れ「辺野古移設では普天間飛行場の早期の危険性除去はできない」と説明し、別の方法を検討することが「近道」とした。

 その上で、中国のミサイル攻撃能力の高まりを背景に射程内に入る在沖米軍基地は地理的に弱くなっていることを解説。委員による米国での聞き取り調査や文献調査に基づいて海兵隊を含めた米軍自身も部隊の分散を重視していることを指摘した。

 会議は提言をまとめる上で、軍事的合理性と沖縄の基地の整理縮小を両立させることを重視したという。「日米同盟の安定のためにも沖縄への基地集中を是正することが望ましい」と記している。玉城知事にとって昨年2月の県民投票で示された民意に加え、専門家の見識に裏打ちされた論理という後ろ盾ができた。

 ただ、理論上、筋が通っていることと実際に日米両政府を動かすことは異なる。同会議の柳沢協二委員長自身が「容易ではない」と認める通りだ。両政府と交渉し全国世論を喚起する玉城県政の取り組みがこれまで以上に必要となる。

(明真南斗)