万国津梁会議 米軍基地の県外・国外移転提言概要全文


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
宜野湾市の市街地の真ん中に位置する普天間飛行場=2018年12月8日、宜野湾市

1・辺野古新基地計画は完成が困難であり、本来の目的である普天間飛行場の速やかな危険性除去と運用停止を可能にする方策を早急に具体化すべきである。

 (1)辺野古新基地計画は、軟弱地盤が見つかるなど技術的に完成が困難で、政府による見通しでもこれから10年以上の期間を要する上に、現状でも1兆円近い工費がさらに膨張することも予想される。日本政府は、本来の目的が新基地建設ではなく、普天間飛行場の速やかな危険性除去と運用停止であることを改めて認識し、それを可能にする方策を早急に具体化すべきである。その際、同飛行場の海兵隊航空部隊の訓練の県外・国外移転をさらに進めることも考慮されるべきである。

 (2)上記の方策を具体化するため、日本政府、米国政府、沖縄県が関わる形で専門家会合を設置することを提案する。そこでは普天間飛行場の速やかな危険性除去と運用停止を可能にするための同基地の機能分散や、中長期的な沖縄米軍基地全般の在り方も検討されるべきである。

 (3)沖縄県は、日米両国の政府、専門家、世論に対し、普天間飛行場の速やかな危険性除去のためには、辺野古新基地計画はもはや「唯一の解決策」にはなり得ず、完成すら困難であること、民主主義や環境破壊のみならず、財政や安全保障の観点から見ても現行案のような「大規模で恒久的な新基地建設」は合理的ではなく、新たな打開策を見出すことが日本全体、また日米同盟にとっても有益であることを積極的にアピールし、国民的関心を喚起していくべきである。

2・近年の安全保障環境を踏まえて沖縄米軍基地の整理縮小に取り組むべきである。

 (1)日米両政府は、中国のミサイル能力の向上とそれに伴う米軍基地の脆弱(ぜいじゃく)化といったアジア太平洋における近年の安全保障環境の変化を踏まえ、米軍の兵力構成や基地の在り方を柔軟に再検討し、沖縄米軍基地の整理縮小を加速させるべきである。その際、日米安保の安定的運用という観点からも沖縄県の意見を反映させることが重要である。普天間飛行場の返還を含めたこれらの課題について、上記1―(2)で提案した専門家会合で検討することも一案である。

 (2)沖縄米軍基地における最大の兵力である海兵隊の駐留の在り方を見直すべきである。一つの方策として、沖縄に駐留する海兵隊の日本本土の自衛隊基地への分散移転・ローテーション配備とともに、自衛隊と米軍による基地の共同使用を進めることも考えられる。さらに日米両国政府は、沖縄の海兵隊のアジア各地への分散移転・ローテーション配備を進めるなど、安全保障環境の変化に対応した創造的な戦略対話を開始すべきである。

 (3)沖縄県は、本土の都道府県、市町村と米軍基地や日米地位協定をめぐる問題について情報交換や連携をさらに強め、基地負担や日米地位協定が沖縄だけでなく、日本全体の問題であるという機運を高めていくべきである。

3・沖縄はアジア太平洋における緊張緩和・信頼醸成のための結節点を目指すべきである。

 (1)アジア太平洋地域は、安全保障面における緊張関係と経済面における緊密な結びつきという二つの面を併せ持っている。さらなる繁栄と安定を維持するためには抑止力の強化だけでなく、域内における緊張緩和と信頼醸成が今後の重要な政治的課題になると認識すべきである。

 (2)沖縄は域内有数の観光地であるだけでなく、貿易によって広くアジアを結んだ大交易時代や苛烈な沖縄戦の経験など、アジア太平洋の過去と未来、平和と安全保障を考える上でまたとない思索の場である。沖縄県はそのような特性を生かし、アジア太平洋における地域協力ネットワークのハブ(結節点)となることを目指すべきである。域内対話のための定期的な会議の開催や、そのための拠点となる機関の創設などが検討されるべきである。その際、内外のシンクタンクや県内に設置されている関係諸機関と積極的な連携を進めることが望ましい。

 (3)沖縄が「アジア太平洋における地域協力ネットワークのハブ(結節点)である」という認識を内外に広めるためにも、沖縄県は自治体間の国際的な交流をより積極的に展開し、地域協力のネットワーク構築を自治体の立場から下支えするべきである。