新型コロナ感染拡大で世界は今どうなっている? スーパーに列、棚に商品なし、ガラガラのレストラン街…琉球新報の海外通信員レポート


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るっている。各国のウチナーンチュの暮らしや現地の状況はどうなっているのか。本紙海外通信員に現状を伝えてもらった。

食料品を求めてスーパーに並ぶ人たち=フランスパリ郊外

フランス

 フランスのパリ近郊に住む大城洋子さんは「外出禁止令が始まる2週間前は全く危機感がなく、日本は大変そうというくらいの雰囲気だった。あっという間に状況が悪化した」と説明する。自宅は田舎で危機感を感じる場面は少ないというが、近くのスーパーで朝、50メートルほど人が並んでいる光景に衝撃を受けた。夕方になると待たずに中に入れ、品薄ではあるが当面必要なものは問題なく買えたという。大城さんは「不安になる気持ちも分かる。私も不安だ。だけどこんな時こそ不安に振り回されず、立ち止まり考える賢明さを持ちたい。日々に追われていた家族がずっと一緒にいられるまたとない機会なのだから」と話す。

ボリビア

 安里玉元三奈美さんによると、ボリビアでは、国内で38人の感染者(3月25日時点)が確認され、感染拡大予防策として3月26日から4月15日まで、国境封鎖と国民に24時間強制外出禁止の緊急衛生戒厳令が発令された。国際便を含む全ての交通機関の停止や公共・民間交通機関の通行も禁止。終日外出禁止で違反者は罰金が科せられるが、平日正午まで、1家族1人のみ食品や必需品の買い物のため外出できる。オキナワ移住地の商店やスーパーは食品を求める人で混雑しているという。学校は全国全て休校となり、日に日にマスクの着用者が増えてきている。

 

 

米国

 ハワイ州では「外出禁止令」で全てのイベントがキャンセルになり、学校は休校、仕事も在宅業務となっている。飲食店はテイクアウトのみ、観光地も全て閉鎖している。名護千賀子さんは「思い切った『封鎖』という措置を取り、長期的視点で住民の健康とハワイの経済を守ろうと、州知事、ホノルル市長ともに苦渋の決断であったと思われる」と話す。公共では人と人との距離を1・8メートル空けるように呼び掛け、住民は「Stay Home, Be Safe(家にいよう、安全に)」と呼び掛け合う。高級レストラン、ホテル、旅行会社、航空会社といった観光業界からは既に失業者が出ており、州の失業保険交付金申し込みのオンライン手続きがかなり混み合っているという。

 嘉数悠子さんによると、ハワイでは年配者は「クプナ」と呼ばれ敬われている。コロナウイルスは高齢者の重症化があることから、「クプナを守ろう」をスローガンに、多くのスーパーではクプナ限定の買い物時間が特別に設置された。公立学校も4月末まで休校だが、オンラインの授業が提供されている。物価が高いハワイでは子どもの貧困問題が深刻な問題であり、学校給食が唯一のまともな食事という子どもも多い。休校は死活問題につながるため、18歳以下の子どもを対象に、無料で弁当を支給するプログラムも始まった。

スーパーではトイレットペーパーや手指消毒剤が常時品切れの状態=ハワイ州

 東部バージニア州の鈴木多美子さんによると、州の感染者は400人近くに上る。鈴木さんは買い物に行く途中、銃の販売店の前に8人程度の行列ができているのを見た。「暴動が起きた時、家族を守るためだと言っていたニュースを思い出した」と話す。首都ワシントンDCは桜が満開を迎え、沖縄ブースも出展予定だった毎年恒例の全米桜祭りのイベントは全て中止になった。

 西部カリフォルニア州は19日、約4000万人の全住民に対し、食料の買い出しや通院など必要な場合を除き自宅にとどまるよう命じた。同州では現在900人以上の感染が確認されて、今後56%が感染するという予測もあるという。ロサンゼルスの当銘貞夫さんは「県人会主催のビギンのコンサートも2度目の延期で不運を余儀なくされた」と残念がる。

ドイツ

 ドイツ・デュッセルドルフ市に住む田中由希香さんによると、感染を可能な限り抑えながらも、医療体制や社会インフラを守るための対策をドイツ政府、各州政府は続けている。学校の休校と同時に、社会活動の維持に必要な仕事に就く人々の子どもを引き続き学校で受け入れることも決まった。企業への金融支援ほか、芸術家や自営業者、小規模事業者等へ返還不要の現金給付等、緊急措置が次々打ち出されている。

 食料品店や薬局、銀行など、生活に最低限必要な店舗以外は閉店し、営業や集会などをした違反者には罰金もある。リスクの高い高齢者を守るため、休校に伴い祖父母宅に児童生徒を預けることや、介護福祉施設などへの家族の訪問も禁止された。買い物や散歩などを除き自宅にとどまるよう課されている。

 

 

中国・上海市

 中国・上海市に住む小谷良太さんによると、春節直後(1月28日頃)から、生活に必要な公共交通、輸送、スーパー等を除く、すべての企業が活動休止し、学校は今も休校が続いている。「小区(シャオチュ)」と呼ばれる団地のような集合住宅の入り口では、住人以外の出入りが禁止され、住人も入行証の提示、検温が義務付けられた。

 3月中旬頃からかなり落ち着きを取り戻し、徐々に普段の生活に戻り始めているという。学校はまだ休校中であるものの「企業の8割は活動を再開しているように感じられる」と小谷さん。だが、以前のように容易に日本、沖縄に行き来することができず、学校も再開される見通しがないため、小谷さんの子どもは4月から上海日本人学校に入学予定だったが、学校再開まで、沖縄の小学校に入学させる予定という。

 「1人1人が日々の生活、行動に注意して、世界各国の人が協力し合い、早くこのウイルスを抑え込むことを願うとともに、私も普段通りに家族みんなで一緒に暮らせる日々が早く迎えられることを切に願っている」と話す。

 

 

シンガポール  

 遠山光一郎さんによると、シンガポールは比較的初期に感染者が増えたが、中国や韓国への渡航禁止など政府の素早い対応で落ち着いてきた。だが欧米での感染者が急増するにつれ、3月初旬から海外からの帰国者を中心に感染者が急増。出入国をより厳しくし、娯楽施設の閉鎖、10人以上のイベント禁止、レストランなどでの人々の距離を1メートル間隔に保つことなど厳しい対応に踏み切った。

「水までも輸入に頼る国は有事にはとても難しい環境にあると改めて感じる機会となった」と話す遠山光一郎さん

 学校は部活や行事は中止だが授業は現時点では通常通りに実施されている。食料品などの買いだめ騒動も起こった。遠山さんは「隣国で多くの食料を輸入しているマレーシアがロックダウンした時は私も食料のストックがとても心配になった。資源がなく、農業や労働集約的産業が極端に少ないシンガポールは知的集約的産業に特化して成長してきたが、水までも輸入に頼る国は有事にはとても難しい環境にあると改めて感じる機会となった」と話している。

ニューカレドニア

 南太平洋のフランス特別自治体ニューカレドニアは3月18日、オーストラリアを経由してきたフランス人夫婦に陽性反応が出たことで、高等弁務庁・政府が27万人の島民に対して、不急不要の外出を控えること、20人以上の集会の禁止、バー、レストラン、ナカマル(地元のカババー)ディスコなどの閉鎖、学校閉鎖などの緊急事態宣言を行った。

閉鎖されたレストラン街=ニューカレドニア

 学校で働く山田由美子さんは「19日のうちにネットを使っての遠隔授業の行い方、生徒・保護者との密な連絡の取り方などが情報として入ってきた」と話す。21日に新たな感染者が確認され、一層厳しい外出禁止令が発動された。食料品、薬局、ガソリンスタンドといった国民生活に必須のものを除く全ての店が閉鎖。買い物などのための外出の際は外出許可書所持が義務となった。

 公共交通機関のバスは20日から止まり、飛行機も21日から国内線・国際線とも休止。3月24日の時点でニューカレドニアでの感染者は10人。首都ヌメア市内の高級ホテルはそれ以前にニューカレドニアに到着した人たちの隔離施設となっているという。