1日から新年度が始まる中で、新型コロナウイルス感染拡大に影響を受けた企業経営の悪化により、県内企業でも新規学卒者の内定取り消しや入社延期が発生している。航空路線の運休・減便、クルーズ船の寄港キャンセルで観光客は落ち込み、飲食や宿泊業を中心に県内企業は厳しい経営環境に追い込まれている。景気回復の見通しが立たない中で、企業が採用を控える動きが広がることも懸念される。一方で、内定の取り消しや失職した人を採用する動きも出ている。
県経営者協会の山城勝常務理事は「全国では(内定取り消しが)発生しているけれど、県内ではないと思っていた」と驚きを見せた。これまで県内は好景気が続き、人手不足の中で多くの企業が賃上げを実施していた。「人材確保のために初任給を上げた企業も多く、今後もコロナが長引けばさらに影響は大きくなりかねない」と警戒する。
同協会では労働雇用対策委員会を通じて、行政に支援制度の拡充などを働きかける予定だという。
県中小企業団体中央会の上里芳弘専務理事は「景気回復の見通しが立たない状況なので採用を控える動きが拡大する可能性がある」と語り、2021年3月の来春卒業予定の学生の就職活動にも影響が出ないか不安視する。中小企業では社員の雇用維持が重要になることを指摘した上で、「今は苦しい立場に置かれている。雇用調整助成金を活用して働いている人たちを守る必要がある」と強調した。
沖縄労働局が把握する県内就職の影響のほかに、県外就職が決まった県内学生の中にも就職先を突如失う影響が出ている。名桜大学では、福岡県のスポーツジムに内定していた男子学生1人が内定を取り消された。企業側は学生に「8月ごろまでに業績が回復すれば声を掛ける」と説明しているという。学生は九州出身のため既に県外に転出しており、しばらくはアルバイトをして過ごすという。
こうした中で、カヌチャベイリゾート(名護市)は3月18日から、新型コロナの影響で内定を取り消された新卒者や、失職した人などを採用する取り組みを始めた。ブログや公式SNSを通して出身地、職歴を問わず求職者を募集し、入社時期や部署などは応募者との相談で決める。入社後は3カ月間の研修を用意する。担当者は「回復期に向けた準備であり、自社のステップアップにつながる」と意図を話した。
りゅうぎん総合研究所の久高豊専務は「リーマン・ショックを超える危機に直面している。企業が個々の力でどうにかできる状況を超えており、政府のさらなる支援が必要になる」と指摘し、「万が一、内定の取り消しがあれば積極的に相談をすべきだ」と呼び掛けた。