「悲惨さ忘れず、学び続ける」 沖縄戦体験を高校生聞き取り 北谷町広報に掲載へ


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野国昌春町長の右足に残る沖縄戦の傷痕を見つめる高校生たち=2日、北谷町役場

 【北谷】沖縄県北谷町は4月から、高校生らが1年かけて沖縄戦の実相を学ぶ新たな取り組みを始めている。沖縄戦体験を次世代に継承し、平和を発信する人材を育成することが目的で、平和学習で広島や長崎に派遣された高校生などが参加する。生徒が町内の沖縄戦体験者から聞き取りをし、町が毎月発行する「広報ちゃたん」に記事を掲載する。1回目の聞き取りが2日に行われ、野国昌春北谷町長の体験を聞いた。

 野国町長は1945年3月に、当時の北谷村上勢頭で生まれた。戦時中に母親に背負われている際に流れ弾が当たり、右足に大けがを負ったことを語った。今でも右足に傷痕が残っている。熱心にメモを取る生徒たちに「たくさんの経験者の話を聞いて、沖縄戦の実相を受け継いで、皆さんが考える平和な未来を描いてほしい」と語り掛けた。

 聞き取りした北谷高校2年の長嶺愛紗さん(16)は「悲惨さを忘れないために学び続けていくことが大切だ」と話した。同校3年の比嘉若都さん(17)は「戦争体験を継承するために、できることをやりたい」と力を込めた。

 町では1995年から、広島と長崎への派遣事業を実施している。派遣後は学習成果発表会などを開いているが、単年度で事業が完了するため、継続的な学びにつなげることが課題だった。戦後75年の節目を迎え、平和の継承を担う人材育成に力を入れるため、派遣に関わった生徒らに聞き取りへの参加を呼び掛けた。

 町は2020年度予算の平和推進費に、前年度比約460万円増の約1420万円を計上した。戦争体験の聞き取りや、これまで町が集めた沖縄戦資料の映像化などを計画している。
 (新垣若菜)