【糸満】平麺の支那そばとサバの水煮缶、バター(またはマーガリン)、ネギというシンプルな材料だが、勘と経験が味を左右する糸満市座波の「座波そーみん」。一見、スープパスタのようなそうめんチャンプルーだ。コンビニエンスストアがなかった時代、おなかをすかせた男子中学生らが屋外で作り、みんなで食べた思い出の味。今では集落の行事の後に作り、地域の居酒屋の定番メニューにもなった座波のソウルフードが、地域で脈々と受け継がれている。
座波区評議委員会に「座波そーみん」について聞くと、「安くておなかいっぱいになる」と口をそろえる。誰が始めたかは分からない。40代後半以上の男性は中学生の頃に作り方を教わった。仲間が集うと小銭を集め、商店で材料を購入。屋外で火を起こし、鍋代わりにブリキのバケツを使ったという逸話も。サバの水煮の空き缶は“親分”の皿になるなど思い出話は尽きない。
「座波そーみん」は汁気が多い。「達人」と呼ばれる金城正信さん(73)は「火加減とゆで汁のこぼし方に微妙な加減がある」と説明する。支那そばの芯が少し残る「ちょっと硬め」にゆでるのがポイントで、勘と経験が味の決め手だ。
金城勇区長(69)は「仲間が集まって外で作り、みんなでワイワイ食べるからおいしい」と話す。集落の大掃除の後には、各班の「達人」が腕を振るう。
市座波の和琉Dining「くらむとぅ.」の代表・金城誠さん(48)も中学生で作り方を覚えた一人。12年前の開店当初から「座波そばチャンプルー」として定番メニューで、地域の人は必ず注文するという。観光客には「言い方を変えればスープパスタ」と説明するそうだ。
素朴だがサバの水煮とバターが奥深い味を出し、箸が進む「座波そーみん」。簡単で安く、おなかがいっぱいになるという三拍子そろった座波のソウルフードは、これからも区民に愛され続ける。(豊浜由紀子)