航空減便「出荷できない、届かない」 沖縄のライフライン打撃 配達遅れ長期化も


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県外宛のチルド・冷凍ゆうパックの引き受け停止などを知らせる看板=9日、那覇市壺川の那覇中央郵便局

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、島しょ県沖縄にとって「ライフライン」にも等しい物流が停滞し始めた。航空便の減便や運休が相次いだことで、旅客だけでなく航空貨物の搭載量も減少。日本郵便が沖縄と県外間で配送されるチルド・冷凍ゆうパックの引き受けを停止したほか、宅配便各社が取り扱う沖縄発着の荷物も軒並み遅れが生じている。

 ■配達遅れ長期化も

 9日、那覇市壺川の那覇中央郵便局にはチルド・冷凍ゆうパックの停止を知らずに、荷物を持ち込む人の姿があった。東京へ住む家族に食品を送ろうとした40代の男性は「ハムなども荷物の中に入れてしまったので、船便では少し不安がある。他の会社も航空便をやめたら沖縄は大変だよ」とため息をついた。

 宅配便大手のヤマトホールディングス(HD)は9日、沖縄発着の荷物が通常よりも1日程度遅れると発表。佐川急便も全国から沖縄向けの飛脚航空便に1~2日程度遅れが生じている。旅客の大幅な落ち込みで運航を休止する航空便が正常化する見通しは立っておらず、沖縄発着の荷物の配達遅れは長期化する可能性もある。

 7日に政府が発令した緊急事態宣言の対象地域に福岡県も含まれたことで、航空各社は福岡―那覇の減便を発表。福岡から航空便で毎日運ばれる本土新聞西部版の朝刊は8日、減便に伴って那覇空港まで新聞を届けられず欠配が生じた。10日は急きょ熊本県からの発送に振り替えて対応したが、那覇空港に到着した頃には正午を過ぎ、配達が夕方近くになるなど大幅な遅れが出た。

 ■入荷ゼロ

 航空貨物の停滞は個人間の荷物にとどまらない。

 緊急事態宣言が発令された7都府県からの製品や物資の入荷量が減少。さらに、生鮮食品など県外巨大市場への県産品の出荷も減少することが見込まれる。

 4~5月下旬が旬の本マグロ(クロマグロ)を出荷する漁業関係者も、福岡など九州への出荷遅滞を指摘する。福岡路線の減便により、九州への輸送は一度、本州の他地域へと運んだ後に、陸送や航空輸送で届けることになる。到着が遅れる見通しとなっていることから鮮度の保持が課題となり、那覇地区漁協や県近海鮪漁協の担当者は「福岡方面への輸送は難しい」と口をそろえた。

 花の卸売販売を行う県花卉(かき)卸売市場は、新型コロナの影響で国内線が減便したことで、県外から入荷を予定していた花が3分の1に減少した。週に3回、東京、大阪、福岡から約1500箱(約7万5千本)の花を入荷していたが、今週市場に届いた花は東京便と福岡便で通常の半分、大阪便はゼロだった。

 減便でコンテナ数も減少し、他の業社とコンテナ確保の競争状態にある。県外向けの出荷も便が減少していることから、県産のトルコギキョウやダリアの県外出荷が滞る可能性がある。

 同社の兼島學社長は「花の売り上げが減少する中、なんとか頑張ろうと持ちこたえる花屋もいる。初めてのことで手探りだが、県内で一輪でも花を買ってもらえるよう取り組みたい」と県内需要に期待した。
 (池田哲平、沖田有吾、石井恵理菜)