「感染怖い、休めない」那覇空港の店員悲鳴 ビル運営会社が認めず


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
新型コロナウイルスの感染拡大で閑散とする那覇空港ロビー=9日午前9時50分ごろ(大城直也撮影)

 14日午前、那覇空港国内線の旅客ターミナルビル。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言から1週間が経過した後、店のほとんどが営業を続けていた。フロアを行き交う利用客よりも、テナントの店員の数が多かった。「ビルの運営会社が休業を認めてくれない。自分も新型コロナに感染しているかもしれない。怖くてたまらない」。沖縄の空の玄関口で働く人たちは悲痛な声を上げた。

 2019年、沖縄への入域観光客数は1千万人を突破した。3月26日には第2滑走路の利用が始まり、一層忙しくなるはずだった。しかし、ターミナルビルは閑散としている。

 空港の店舗で働く女性店員によると、感染者が県内で確認された後、休業や時短営業を求める声が上がった。ビルを運営する那覇空港ビルディング(NABCO)に認めるよう、入居店舗が要望書を出したという。

 緊急事態宣言が出た後、空港の女性店員は休業できると期待したが、現時点で変わっていない。「台風の暴風域でも休めないこともある。スタッフの命を何だと思っているのか」

 NABCOによると、入居する店舗は計142店。各店はNABCOと賃貸借契約を交わす。NABCOは本紙の取材に「空港サービスを維持するため、一部の店舗から休業要請は出ているが基本的に休業は認めていない」と答えた。現在、休業が認められたのは14店で客と接触するマッサージ店、旅客便がなくなった国際線ビルなどだ。

 ある店舗の男性責任者は客が通らない店先に立っていた。「営業するだけで人件費がかさみ、赤字は膨らむ。それでも休業は認めてもらえない。次の契約更新を考えると、何も言えない」と声を落とした。

 一方、成田や中部など県外の空港では休業する店舗も増えている。関西エアポートは関西国際空港や伊丹空港などを運営する。同社の広報担当者は「新型コロナが広がる状況で、店舗に無理を強いることはできない。店舗から休業の申し出があれば基本的に承認する。台風時などを含め協力はお願いするが、店のスタッフ確保や営業収支もある」と各店の事情をおもんぱかった。

 那覇空港内の女性店員は「何のために、こんな怖い思いをしないといけないのか。客も来ないし、差別的な扱いをされることもある。毎日悲しくて怖い」と不安を訴えた。
 (大橋弘基)