政府が新型コロナウイルス特措法に基づく「緊急事態宣言」の対象地域を全国に広げたことは、県にとっては寝耳に水の事態だった。県はこれまで県外からの来県自粛要請や県民に対しての行動自粛を求めて感染拡大を抑えるとともに、医療崩壊を防ぐために軽症者用の療養施設の確保を優先してきた。一方、県独自で非常事態宣言を打ち出すことや政府に緊急事態宣言の対象地域に沖縄も含むよう要請することは具体的に検討されていなかった。突然の対象地域の拡大に県職員らは困惑を隠せない一方、玉城デニー知事は県民の危機感を高めるために独自の施策を打ち出す検討を始めた。
■「協議もなし」
16日正午、県内で初めて新型コロナ感染の死亡者が出たことが発表され、衝撃が広がった。午後3時から県庁で開かれた会見。記者から緊急事態宣言について問われた玉城知事は「国に緊急事態宣言を要請する考えは今のところないし、協議もしていない」と否定した。
県独自の非常事態宣言についても「新規患者や感染経路不明の症例数の動向、入院病床の調整状況を総合的に勘案して、専門家会議や関係機関の意見を聞く必要がある」と述べるにとどめた。
玉城知事が会見場を退出した約30分後、全国紙記者から緊急事態宣言の対象地域が全国に広がるとの発言が出て、会見場が一瞬どよめいた。県の対応を問われた大城玲子保健医療部長は「今の情報はまだ聞いていない」と困惑した様子で話した。県は国の緊急事態宣言に関する対応方針を持ち合わせてはなかった。ある県幹部は「私の頭の中が混乱しているよ」と思わず漏らした。
■危機感持たせたい
異例の事態を受けて、県内外の報道機関で構成する県政記者クラブは、県に玉城知事を取材する場を設けることを要請した。だが玉城知事は午後4時35分ごろ「ニュースで知りましたが、まだこれからです」と報道陣に言葉少なく伝え、県庁を後にした。
「『ナンクルナイサ』の県民意識に危機感を持たせたい。諸外国並みに対応しなければ感染拡大は止められない」
政府の方針を受け、玉城知事は16日夕、そう周囲に漏らし危機感をあらわにした。関係者によると、スーパーやコンビニに対してマスクをせずに来店する客の入店を禁止したり、レジ待ちの間に必ず一定間隔を空けることを求めたりすることなどを検討している。
緊急事態宣言に基づき、県は法的根拠を持って外出自粛要請をしたり、店舗や施設へ休業要請をしたりできる。ただ既に7都府県での緊急事態宣言などにより、県内経済は深刻な打撃を受けている。今後は先行都府県のように、休業要請とセットで県が事業者などに休業補償をするか否かが焦点となる。県幹部は「休業補償ではいろいろな濃淡が出ると思う。県庁内で議論しないといけない。国の動きを見つつ、専門家の知見も取り入れて考えたい」と語った。
(梅田正覚、西銘研志郎)