【識者談話】「戦中・戦後史を保管する記録」 石原昌家氏(沖国大名誉教授) 伊江村収容所の住民記録


社会
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 米軍が上陸し「捕虜」となってわずか3日後に住民が自らこのような記録を残した例は聞いたことがない。あの地獄のような恐ろしい戦争中に、ここまで自分たちを秩序立てて統治するシステムを作ったのは、おそらく伊江村の収容所が初めてだったのではないか。米軍に言われて作ったというよりも、自分たちで取り決めをしていたと読み取れる。

 沖縄戦の様相は島々や地域によって異なる。私はよく「戦前、戦中、戦後が同居しているような状態だ」と表現してきた。

 伊江島では、なぜこのように秩序立てた取り決めをすることができたのか。あえて考えるとすれば、米軍上陸から数日で収容所が開設されたので戦前・戦中の上意下達の仕組みの統治能力が崩れていなかったことが背景にあった可能性もあるのではないか。

 伊江村史や戦中・戦後の記録を補完していく貴重な資料となるだろう。

(平和学)