自炊厳禁、湯沸かしは許可制 住民の記録から分かる収容所の厳しい規律


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住民たちが協力し調理する「ナーラ収容所」の炊事場の様子。右奥の女性は収容所の様子を証言した大城賢雄さんの母・知念ナヘさん=1945年5月(県公文書館所蔵)

 伊江村民収容所「炊事竝幕舎記録」は「雑記帳」と記された縦19センチ、横14・2センチのノートに、表紙は墨筆で、内部のページはほとんど鉛筆で書かれている。一部破損し現存するのは43枚。炊事場や幕舎の取り決めを守るよう記している。「炊事場記録」の項目では炊事場を開設した日付を「昭和廿年四月十九日」とし班長1人、記帳係1人、若手の要員を置くとした。班長は炊事全般について指揮監督すると定めた。一つの幕舎内の収容人員を120人以内とした。班員が病気の際は班長に申し出て診察を受けることや、飲料水の節約努力、不都合な者は村長の命令で退舎させることができる規定もある。

 炊事場開設から約1カ月後の5月7日付の伝達事項は(1)幕舎内での自炊を厳禁(2)病人用の湯沸かしが必要な場合は巡警に申し出て許可を得る―と定めた。違反したら幕舎全員の1回分の食事の配給停止にも言及している。大小便は必ず所定の場所で行うことも記した。

 伊江島の収容所にいた住民が5月27日には渡嘉敷村に上陸し同村の収容所で炊事場を設置したことも記した。「出産用飯米給與記録」では、出産があった家庭へ米を1升から2升配給したことが書かれている。

 2008年に伊江村教育委員会の村史編さん担当嘱託員として「記録」について調査した川島淳さんは「幕舎内での自炊・衛生面での違反者が続出したことから、このような伝達事項があったのではないか」と話し、証言収集や分析を重ねる必要性を指摘した。