辺野古設計変更「コロナ渦中に」県が批判 政府は有識者会議で手順踏む


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国が県に提出した「公有水面埋立変更承認申請書」=21日、名護市の北部土木事務所

 県が新型コロナウイルス関連の業務に忙殺される中、政府は21日、名護市辺野古の新基地建設に伴う設計変更を県に申請した。玉城デニー知事は「県民の命を守るべきと申し上げてきた。状況を全く理解していない」と厳しく批判。政府は承認が得られない場合の法的措置も辞さない構えで、対立は長期戦を見据えた新たな局面に入った。

 申請時期は焦点だったが、その瞬間は突然訪れた。21日朝、名護市の県北部土木事務所。午前8時半の始業のわずか10分後、沖縄防衛局職員4人が姿を現し、約1800ページの申請書類を運び込んだ。県に事前の連絡はなかった。

不要不急

 県は現在、新型コロナウイルス感染症の対応に追われている。県内の感染ペースが急速になり、県の玉城知事は20日に県独自の緊急事態を宣言。県職員も感染防止のため半数ずつが在宅勤務する取り組みを始めたばかりだった。「コロナの時期なのにね」。沖縄防衛局職員が申請書類を持ち込んだ1時間後、登庁した謝花喜一郎副知事は記者団にそうつぶやいた。

 辺野古の工事関係者にコロナ感染者が出たことを受け、玉城知事は17日に菅義偉官房長官に工事中止を申し入れた。設計変更申請についても、新型コロナの情勢を踏まえ適切な対応を促していたが、顧みられることはなかった。

 県関係者は「不要不急この上ない」と不満をあらわにするが、政府側は淡々と受け止める。河野太郎防衛相は21日の会見で「書類の提出ですから、あまりコロナとは関係ないのではないかと思う」と語った。

周到

 軟弱地盤の判明後、政府は変更申請に向け慎重に準備してきた。過去には米軍岩国基地(山口県)の滑走路沖合移設事業で、政府が同県に8回変更申請を出した経緯がある。だが新基地への反対が根強い沖縄では事情が異なる。

 「何度も申請を出して簡単に認めてもらえる環境ではない。一度で完全な形で出さないといけない」。防衛省幹部はそう説明する。

 当初、政府は3月中の申請を視野に入れていた。だが、水面下70メートルより深い地点の地盤の軟弱さを示すデータの存在が2月に発覚。防衛省の有識者会議でお墨付きを得る手順を踏み、時間をかけた。

 今回の設計変更では大規模な軟弱地盤の改良工事を組み込んでおり、県の審査は長期化するとみられる。県幹部は「県の審査中に国が何かをしてくることは通常考えられない」とけん制する。だが県が判断を先送りし続ければ、政府が法的措置に訴える可能性もあり、玉城県政にとっては正念場が続く。
 (明真南斗、當山幸都)